2013年11月26日火曜日

避難所 Q&A



 地震は約10秒。避難所が消えたのは5年後でした。(阪神淡路大震災)





Q. 避難所には地域住民だけしか入れないの?

必ずしも地域住民に限定されず、たまたまその土地を訪れていた旅行者なども対象になります。ただし、避難対象住民に対して指定避難所の収容力は平均3割ほどと言われています。筆者の地元では、避難対象住民9000人に対して650人ほど(約7%)しか収容できない避難所もあります。また、行政が指定している避難所が川べりだったり、液状化の危険があったりするため、自治会が自主的に、より安全な場所に避難する計画を立てている地域もあります。また、外国人の避難先は言葉の問題もあり、日本人一般の避難所とは別に、インターナショナルスクールなどが指定される場合がありますが、日中に災害が起れば、学校の生徒や先生達で体育館は一杯になってしまいます。また、避難所に指定されていても私立学校の場合、使用した体育館のダメージなどの修理費が市町村からは出ないので、行政との協力関係がうまくいってないところもあります。現実的なシュミレーションをして事前によく話し合っておく必要があります。

東京の場合、単純計算で東京ドーム12個分のスペースの避難場所が足りないと試算されています。最悪70万人ほどが避難所に入れず、疎開などの方法を考えざるを得なくなります。阪神淡路大震災被災者の声、「小学校の避難所に行ったが、そこはもう満杯で入り込む余地が無かった。トイレを借りようとしたが、はなはだ汚く、用が足せなかった。」「家族の少ない人は出かけている間に、確保しているスペースがだんだん狭くなる。」「傾いた家でも、あるなら帰れと避難所できびしい声だった。」これが現実だろう。



Q. 避難所の運営は市町村の職員がしてくれるんでしょ?

職員も被災します。また、災害発生時には自治体は被害状況の把握、必要な物資の確保、危険箇所への対応に忙殺されるため、避難所に十分な数の職員を配置できなくなります。従って、避難所の運営は、原則として避難者を中心とした自治組織によって行われることが望ましいのです。理想的には事前に「避難所運営委員会」を自治会ごとに立ち上げて、部屋割り、役割分担などを話し合い、準備しておくことです。



Q. 避難所運営に関して何を考慮しておくべきですか?

1.施設管理者と協議し、「避難所スペース」と「非避難所スペース」を明確に区別する。学校が避難所となる場合は教員室や理科実験室などは立ち入り禁止にしておく。

2.避難所スペースを「共有部分」と各世帯の生活の場としての「居住部分」に分ける。部屋割りは世帯を単位として行い、可能な限り血縁や居住地域を考慮した部屋割りが望まれる。目安となる一人当たりの面積は最低でも2平方メートルを確保する。また、要介護者、妊婦、乳幼児世帯などは、和室、冷暖房がある部屋などを優先して割り当てるなどの配慮が必要。さらに旅行者、外国人やペットを連れてくる人の配置問題もある。また、運営委員がミーティング等で使う本部室も確保しておく必要がある。仮設トイレの設置場所、物資搬入箇所、物資保管場所も確保する。以前の災害から学べる事は、雑然と避難民を入居させるのではなく、以上のことを考慮しつつ計画的にスペースを割り振ることが重要で、体育館にびっちり詰めないで、トイレに出る通路、車いすが通れる通路を計画的に確保して配置することが重要である。また、大きな避難所では負傷者が次々に運ばれてくるので、トリアージをする場も必要となる。



3.一人暮らしの若者や高齢者が増えるなか、集団生活に慣れない人が避難所で生活を共にすることになる。当然、多くのストレスが予想される。厳しい環境の中で、少しでも快適に生活するため、最小限の生活ルールを定め、避難民全員で守ることが必要となる。ルールつくりのポイントとしては、地域の実情に合わせ、わかりやすく、シンプルに複雑にならないように心がける。事態の推移によって見直す必要もある。

        いずれにしてもリーダーがいないと統率がとれず混乱する。リーダーの下にすばやい  
        役割分担が必要。



Q. 避難所開設の手順はどうなるんですか?

1.避難所の確認 (自治体が指定するが、その避難所が安全かの評価も必要。)

2.避難所マップなどで、住民に避難所の場所を知らせる。

3.避難所の開設 (誰が体育館や備蓄倉庫の鍵を持っているか事前に確認)

4.避難者名簿の作成 (誰が何人いるのか把握しておく)

5.仮設トイレの設置 (高齢者が使いやすい位置で、十分な数のトイレ)

6.部屋割り、救援物資置き場等の指定 (居住区、非居住区の指定なども)

7.入居している避難民へのアナウンスの方法確認(場内アナウンス、掲示板)



Q. 避難所で特に配慮することは

1.阪神淡路大震災では、避難所で多くの高齢者が亡くなり、震災で亡くなった人の14%を占めるに至った。いわゆる震災関連死である。高齢者への配慮は大きな課題となる。

2.避難場所ではトレイの数が著しく不足し、しかも仮設トイレは居住スペースから遠くに設置されている場合が多い。そのため高齢者はトイレにいかなくていいように飲料水を控え、結果的に体調を崩してしまう。トイレの位置なども高齢者に近いところにするなど考慮が必要だ。また、トレイが不足するのは目に見えているので、多めに緊急トイレを自治会単位で用意しておくことをお勧めする。




3.避難場所が不快であるとの理由で車で寝泊まりする人もいる。それでエコノミー症候群となる人もいる。また、避難所ではストレスが多く、運動不足になるので、生きる気力を失う「生活不活発病」となる高齢者も多い。すこし落ち着いて来たら、避難所でのラジオ体操など、少しでも体を動かせる機会を作ることが助けになるだろう。人々が孤立しないよう、日常生活の中で地域住民が触れ合っていることが大切だ。

4.着替え時など、女性のプライバシーを配慮したスペースつくりも必要。残念ながら、このような非常時にもセクハラが起こりえる。

避難生活が長引くことになれば、次は仮設住宅入居となる。応急仮設住宅は災害救助法で規定され「住家が全壊、全焼、または流出し、居住する住宅がない者であって、自らの資力では住家を得ることができないものを収容する」となっている。使用期限は2年が原則で、使用料は無料だが、水道・光熱費は入居者負担となる。ただし、問題は土地探しである。東日本大震災では、水に浸かってない、土砂災害の無い用地を見つけるのが困難であった。用地があっても土地に住戸を目一杯建設して、集会所などを建てる余裕が無い場合もあった。あるいは、狭い駐車場のみが子供の遊び場という所もあった。また抽選であちこちに住民が散在してしまったので、元のコミュニティとの断絶、高齢者の集積などがあり、孤立した住居者の孤独死が多く現れた。今後はできるだけコミュニティ入居の実現、仮設店舗などの生活支援施設の併設が要望として揚げられている。



個人が自力でつくる仮設住宅の場合、法的担保はない。市町村が民間賃貸住宅を借り上げて提供する「みなし仮設住宅」もある。家賃は一戸当たり月額6万円とした前例を参考にすることになっている。ただし、この場合、被災者が入居していることがわかりにくく、ボランティアが物資を運んで来ないという問題があった。

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おすすめ本
「地震イツモノート キモチの防災マニュアル」 ポプラ社


阪神淡路大震災の被災者の生の声が散りばめられ、実際的。ポケット版で、図も多くさっと読めます。幾つかの名言引用

「ライフラインが止まる。それは原始生活以下になるということです。」

「地震の瞬間は何もできないと考える」

「揺れた瞬間何もしない。地震に強いとはそういうことかもしれません。」

「隣の人とあいさつしている、それが大きな防災でした。」

「非日常が日常に変わっていく、避難所の共同生活。」

「防災といわない防災。モシモをイツモに」

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災害支援団体クラッシュジャパン次期東京災害対策担当
日本防災士機構認定 防災士
栗原 一芳
crashkazu@gmail.com


2013年11月5日火曜日

東京湾の津波






揺れを感じなくても大津波が来ることがある

「地震津波」は海底下の比較的浅い所を震源として大きな地震が発生すると、断層運動により海底地形が変動し、それが海水に伝わり、海面が上下することにより津波が発生する。断層破壊がゆっくり進行すると、断層がヌルヌル動き、陸上では強い揺れを感じない。しかし、津波は発生する。1960年のチリ地震津波では北海道から沖縄にかけて142名の死者が出た。遠方で起った地震で日本で揺れを感じなくても津波が襲来し犠牲者を出す事がある。現在ではハワイにある「太平洋津波警報センター」が環太平洋のどこの海域で発生した津波に対しても、各国の地震観測網のデーターをただちに分析して、津波の規模や、進行方向、到達時刻などを推定し、諸国に対して速やかに津波情報を伝達する体制が整備されている。


津波の特徴
1.津波の速さはジェット機なみ
太平洋の平均水深4000メートルでは、津波は時速700キロというジェット機並みのスピードになる。

2.津波は何波も来る
震源域からの津波はひとつであっても、沿岸部での入射、反射、湾内震動などで、何波もの津波が発生する。沿岸には時間間隔をおいて、津波が複数回襲来する。南海トラフ地震の予測では静岡市に13メートルほどの津波が来るが第一波は2分で到達するという。そして、第一波より、二波、三波のほうが高いケースが多い。いずれにしても第1波が去ったからといって安心してはならない。海岸に出る事は禁物である。

3.津波は湾奥で高くなる。
海に向かってV字に開いている湾は、入り口が広く、奥へ行くほど狭くなるため、津波のエネルギーが奥に向かって集中し、波高が大きくなる。東京湾の場合は入り口が大阪湾に較べて狭く、湖底も50mほどで比較的浅いので大きな津波は発生しないとされている。ただし後述するように、被害が出ない訳ではない。

4.津波は川を遡上する。
       2011年東日本大震災では、北上川を40kmも遡上している。南海トラフでは大阪  
       湾や名古屋湾に5mの津波が襲来するとされているが、何らかのトラブルで防潮堤を超
      えてしまえば、津波は川を遡りまた、道路を進行し、JR大阪駅、JR名古屋駅周辺にまで
      浸水が及ぶという。冬の午後6時、大阪で低避難率の場合の想定では、津波で13万
      2967人(うち1万8976人は河川の堤防崩壊に伴う浸水で死亡)が犠牲者とな 
      る。




津波から身を守るには
津波は1mで死亡率100%といわれる。たとえ20cmでも大人が転倒する。一回限りの波ではなく、水の壁の圧力だからだ。海岸で強い揺れを感じたら、すぐに避難する。なるべく鉄筋コンクリート造の建物のできるだけ高い階(できれば5階以上)を避難場所とする。津波は建物を壊し、壊した瓦礫を漂流物として運ぶので二次災害が起る。さらには海岸のコンビナート等が漂流物の衝突で爆破し火災がおこれば、火炎を内陸に運び込む可能性もある。ただし、全国最大規模の梅田の地下街の浸水被害や、東日本大震災で深刻な被害をもたらした津波火災は、「想定する手法が確立していない」(府防災企画課)などとして想定には含まれていないのが気になる。ともあれ津波/浸水の場合は「遠く」より「上」に逃げることが鍵となる。火災や浸水が無い限りは地下道は比較的安全な場所ではあるが、浸水の可能性があるときは、すばやく地上に出る必要がある。


伊豆諸島では巨大津波
今回、東京都大島での台風被害が注目された。南海トラフ地震では、東京湾には巨大津波はないものの、伊豆諸島では巨大津波が予想されている。大津波高は、新島で30.16メートル、式根島で28.15メートル、神津島で28.43メートル、八丈島で18.07メートル、青ヶ島で17.68メートル、三宅島で16.98メートル、利島で16.18メートル、伊豆大島で15.76メートル、小笠原諸島の父島で18.52メートルなどと想定。到達時間は15分程度(新島)と見ている。ちなみに、鎌倉で10m、千葉館山で11mの予想。




 東京湾は大丈夫か?
総合危険度マップをご覧になれば分かるように、隅田川沿いの江東区、墨田区、台東区、荒川区、江戸川区、葛飾区あたりが最も危険度が高い。この地域は海抜が低く、津波、川の氾濫、さらに古い木造建築も多く、火災や倒壊も起りやすいからだ。いわゆる「川の手」地区は江戸時代にはまだ、大湿地帯で人が住める場所ではなかった。江戸川区では川の氾濫により5.5メートルの浸水が想定されており、67万人の住民のうち3階に避難できる人の数は13万人、他の人々は逃げ場を失ってしまう。早急に避難場所の「高台」作りが必要となる。台東区の浸水ハザードマップを見ると区のほとんどがブルーで塗られ浸水の可能性が示されている。上野の山に避難するよう指示されている。


大都市、東京は防波堤で囲まれている。堤防の高さは平均3.5m。しかし、部分的には築40年を過ぎている。老朽化が懸念される。また、液状化や激震で堤防が沈下したり破壊される可能性もある。もともと東京や大阪、名古屋といった大都市は河口にあり、大昔は海だったところで地盤は強くない。堤防に守られている都市なのだ。品川区の防災館のパネルには満潮時に2.2メートル、津波で1上がっても堤防は3.5あるので大丈夫とあるが、最近の政府の南海トラフの予測では、品川は3mの津波とある。



基本的には水門が閉鎖されていれば堤防内への浸水は見られず人的被害は発生しないことになっている。過去の関東の大震災を基にしたシュミレーションから割り出した東京湾の水門の津波高が図に示されている。想定は水門閉鎖時で、地殻変動を考慮した値となっている。中央区で最大津波高2.51m。江東区では最大2.55m。問題は激しい揺れで水門のレールが歪んだり、停電になった時、果たして水門を降ろして津波をシャットできるのかである。しかも、湾岸は液状化の被害も出やすい。東京湾北部地震(M7.3)の想定では中央区最大津波高1.88m、江東区1.75mとなっている。



先日、取材に行った両国橋では写真のように、通常でも川の水面から岸辺テラスまで20センチくらいしかない。堤防も3メートルあるかないか。堤防への反射などで高さを増した津波の遡上波が堤防を超えないだろうか?3:11の時、震度5強でも隅田川では岸辺テラスへ浸水があり、1.46mの津波が観測されている。首都圏直下型では湾岸は震度6強から7の激震が襲う。行政としてはハザードマップの活用を勧めてはいるが、持っている人は15%ほどだという。

こちらにもわかりやすい説明が載ってます。







地下鉄は大丈夫か?
地下は地上に較べ揺れは軽減される。また大江戸線など新しい線は耐震設計となっていると聞く。しかし、銀座線や丸の内線は老朽化しており、トンネルの壁からの浸水が心配だ。東京の地下水が20m−40m上昇している問題がリスクをさらに高めている。大地震でホーム壁にダメージがあれば、水が流れ込む可能性がある。3:11時、飯田橋駅の壁から謎の水漏れがあったという。また、秋庭俊氏の「大東京の地下99の謎」(二見文庫)で「千代田線国会議事堂前駅のホームの壁は水が染み出ており、排水路には音を立てて常に相当の水が流れている。」とあるが、現在は水の音は聞こえない。ただし、水漏れのほうは本当だったようで、現在漏水工事をしている。トンネル自体は写真のように金属の補強板が張り巡らされ、見る限りは、かなり丈夫な印象を受ける。




東京は地形的に高低がある。丸ノ内線は地下鉄なのに、後楽園駅は地上にある。地下鉄の場合、高いところで水が出れば、ひと繋がりのトンネルなので低い他の駅へと流れてゆく。湾岸の低い駅で浸水が始まれば、さらに水はそこに溜まってゆき駅が水没することになる。「荒川土手が北区で決壊」の想定をすると、地下鉄入り口に高さ1mの止水板を設置しても、東京都市部の130駅のうち最大で81駅が改札階まで浸水。3時間で大手町にも到達。ゼロメートルでなくても地上に水が到達しない霞ヶ関や六本木駅でも浸水することがわかった。地下鉄路線網が水路の役割を果たして被害が広がるからだ。シュミレーションにかかわった関西大社会安全学部長 河田恵昭教授は「震災対策で最も遅れているのが地下鉄の水害対策と断言する。また地下鉄の地上入り口から水が流れ込み始めると、下から階段を昇るのが困難になる。川や海の近くの駅の場合は即、地上に出て高い建物に避難する必要がある。



最近は地下鉄の地上入り口に海抜が示されている。水道橋駅入り口で5.4m、内幸町駅で3.5m。有楽町線月島駅では海抜0.9m! 最近は豪雨も多く、地上からの浸水対策が進んではいるが不安も残る。

日比谷は昔、日比谷入江と呼ばれ海水が入って来ていた。明治時代に現在の霞ヶ関から日比谷公園までを官庁街にする予定だったが、日比谷公園地下の地盤が弱く、計画を変更し、公園とすることになったという。ちなみに日比谷公園の地下には巨大な貯水池があり、災害時の給水所となる。このあたりの海抜が3.5mほど。




オリンピックは大丈夫か?

2020年のオリンピックの施設は図のようにすべて湾岸に設置される。その多くは東京湾北部岸壁部分となる。それと懸念されるのが選手村。晴海の岸壁部分の広場に作られるが現在は十分な防潮堤もない。3:11の時、晴海で1.5mの津波が観測されている。(ちなみに筆者が観察したところでは、勝ちどきの岸壁も海面から50cmくらいしかない。)今後、盛り土で対処するようだが、例え浸水しなくても地震体験の無い他の国の選手達は一応にパニックするだろう。また避難先も橋を渡らねばならず、大人数が一時に避難となると相当なパニックになることが予想される。今後、30年で70%の発生確立という首都圏直下型地震。東大の地震研究所によると4年で50%。そういう土地柄であることを頭に入れておかなければならない。もう想定外は許されないのだ。







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要請に応じてパワーポイントでの「防災啓発講演」を行っております。都内であれば、交通費のみ支給でボランティア奉仕致します。講演はパワーポイントで行いますので、プロジェクターとスクリーンのご用意をお願いします。お問い合わせは下記のメールまで。

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災害支援団体クラッシュジャパン次期東京災害対策担当
日本防災士機構認定 防災士

栗原 一芳
crashkazu@gmail.com
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2013年10月16日水曜日

大都市災害



自然現象=災害ではない
自然現象としての地震は常にどこかで起っている。大きな地震が人の居ない砂漠で起っても、人的被害は出ない。しかし、人口密集地域で起れば大きな災害となる。南海トラフ地震予測でも津波34mが来る四国の黒潮町より、津波13mではあっても、人口密集地の静岡市のほうが被害が大きい。実際、南海トラフ地震予測死亡者総計の32万人のうちの3分の一、10万人は静岡市の死亡者と予測されている。つまり、自然現象=災害 なのではなくて、

        自然現象防災(対策)= 災害(結果)となる。

また、災害の大きさは災害弱者の数にもよる。災害弱者とは高齢者、障害者、旅行者や買い物客など土地勘の薄い人など災害の時、一人では避難できない人々である。実際、災害での死亡者は圧倒的に高齢者が多い。従って、大都市災害を考える時、一人暮らしのお年寄りの問題は大きな課題となってくる。また、対策といっても国レベル、市町村レベル、個人レベルとあり、それぞれで最善を尽くして頂かなければならない。



都市特有の災害要因
大都市で災害が起れば、残念ながら無傷というわけにはいかない。都市防災の目的はリスクをゼロにすることではなく、対策をすることで「減災」することである。まず、都市特有の要因がリスクを高めていることを把握しよう。

   人口集中と施設の高密高層化
   新旧が混在する建造物、それによる危険の偏在
   地盤沈下や軟弱地盤
   地下空間への進出
   エネルギーの高密消費と供給網での大量蓄積や滞留
   住民の移動距離の大きさと人間関係の希薄化




 
中央区佃ではタワーマンションと古い木造家屋が混在しており、同じ地域でも危険の現れ方が違う。タワーはマンション単位で管理会社も加わり、独自に防災対策が為されている。近所の木造住宅の避難民をマンションで受け入れる際の賛否の問題が生じてくる。
             (写真は佃の高層マンション)





軟弱地盤と水害
東京の東部、川の手地区(ゼロメートル地帯)は江戸時代、大湿地帯で人が住んでいなかった地域である。人が住み出したのは大正後期、昭和初期という比較的最近の話なのだ。現在、江戸川が氾濫すると5.5mの浸水となり、江戸川区67万人のうち3階に避難できるのは13万人のみという試算がある。さらに2100年までには温暖化で海水が約1m上昇すると言われており、川の手地区対策は長期的にも必要になってくる。さらに、最近は東京の地下水が20m、ところによっては40mも上昇してきており、液状化や地下鉄への水漏れが心配される。都市の道路は舗装されており、雨水が地面に吸収されにくくなっており洪水の発声を早めたり、大洪水をもたらしたりする。川の氾濫が無くても、豪雨などで排水が間に合わず、内水氾濫を起こす箇所も多数ある。



火災旋風対策
(右写真 関東大震災の火災旋風)

関東大震災では8割が焼死ということで、注意すべきは火災旋風(火炎の竜巻)である。感状7号線と山手線の間が木造密集地帯であり、東京都は区画整理に取り組んでいる。大規模火災の焼け止まり要因は、道路・鉄道などが4割、耐火建造物が3割、空き地などが2割、消防活動による延焼遮断は約1割であった。それゆえに道路や空き地でスペースを作り火を遮断することが優先されるべきなのだが、高齢者住居の立ち退き問題などで予定通りには進んでいないようだ。関東大震災ではいわゆる広域避難所で3万8千人の方が火災旋風により焼死してししまったことを忘れずに、火の周りをシュミレーションして広域避難所(延焼からの避難所)のさらなる安全性を高めなくてはならない。


交通規制
阪神淡路大震災では多数の道路が地震によって被害を受けたこと、外部からの大量の流入車両によって大渋滞が引き起こされた。それで消防車や救急車の走行が著しく妨げられた。人命を最優先にするならば時間が勝負となるので、道路使用にも優先順位をつける必要が出てくる。東京では震度6以上で交通規制が敷かれ、環七から内側は全面車両通行禁止となる。また車による避難も禁止される。


地下空間
大都会には広大な地下空間がある。発展のスピードが早く、規制が後追いになっている。地下空間の不安要素は・・・

1.地震による構造的破壊で地上に出られなくなるのでは
2.火災時にはすごい煙で逃げ出せないのでは
3.窓が無いので爆発が起れば一瞬にして炎に包まれるのではないか
4.水が流れ込んだら水没してしまうのではないか

地下は地上の高層階より揺れ自体は少ない。しっかりした最近の都心の構造物なら地下は比較的安全なところともいえる。ただし、近くに川があったり、低地地帯の場合は要注意。火災で怖いのは煙であり、ハンカチを口にあてる、低い姿勢で移動するなど、煙を吸わないことが重要である。地下道は通常60mおきに非常口があるのであせらず、壁沿いに歩いて出口を見つけて頂きたい。

水害がなければ、地下鉄は地上電車より早く回復する。地下鉄は自家発電があり真っ暗にはならないことになっている。丸の内線、銀座線は古いので駅トンネルなどの建造物にダメージが出やすい。また、高架線が線路脇にあるので、やたらと線路に降りると危険である。

大型商業施設
百貨店など人が多く集まるところの耐震化を進めるため1995年には耐震改修促進法が制定された。湾岸の大型商業施設は市町村と協力して一時避難所となっている所もある。大型商業施設は不特定多数がおり、パニックが起りやすいのでマス避難、誘導の知恵と訓練が施設側に要求される。最近増えている「駅ナカ」は従来、交通手段を利用するための場所と位置づけられ、人が滞留する場所ではないとして、消防法では改札口内側にはスプリンクラーの設置を義務づけていない。大型商業施設と同じようにマス避難、誘導の対策が要求されるであろう。


東京都の防災対策の課題
内閣府中央防災会議、首都直下型地震対策検討ワーキンググループによると、

1.耐震化の促進
2.木造密集市街地の整備、火災も危険
3.津波対策、帰宅困難者対策
4.自助、共助の強化
5.発災時における広域連携の体制
6.首都中枢機能の持続性確保

                 (有明地震防災館内の災害オペレーションルーム)


そして、さらに以下の被害発生の認識と取り組みの必要性

1.甚大な広域的火災延焼被害に対してどのような対策を取るべきか。
2.膨大な避難者、平日昼間大量の帰宅困難者。
3.経済機能、交通寸断、遮断による人、物流の影響、燃料、電力等の不足による機能不全。
4.域内交通の長期途絶による住民の生活物資の不足疑念
5.広域的災害応急体制
6.防災教育、訓練の徹底
7.迅速な復旧。復興に向け事前に何を考えておくべき。

ただ、放射能対策や富士山噴火対策などが考慮されていないのが少し不安だ。市町村レベルでのこの分野では市民への教育が十分でないように思われる。また、約70万人という避難所に入りきらない人の問題があり、「疎開」など比較的安全な地域への移動ということも検討する必要がある。

首都圏直下型地震の場合の被害総額は112兆円。南海トラフの場合は220兆円(これらは原発災害を含まず)。いずれも国家予算を大きく上回る。世界都市東京が壊滅的ダメージを受ければ、世界の経済にも影響する。日本国債の暴落や円激安に進む事も考えられる。なにより、東京は日本の「頭脳」なのだ。大災害に向けての首都機能移転(Contingency plan)がどのくらい具体的に進んでいるのだろうか?

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一般社団法人 災害支援団体クラッシュジャパン
次期東京災害対策担当
防災士
栗原一芳(くりはら かずよし)
crashkazu@gmail.com