2014年5月15日木曜日

そこが聞きたい、富士山大噴火




Q. 日本に火山は、どれくらいあるの? 3:11後の変化は?

A. 日本の活火山は北方領土、海底火山を含めると110もあります!ちなみに
  活火山の定義は最近1万年間に噴火したことがあるか、現在も活発な噴気
  活動をしている火山のことを言います。110のうち、常時、監視体制下
  にあるのが、約半数の47(2010年の時点で)。火山関係の職員不足
  のためらしいです。3:11の東日本大震災後、20の火山で地震活動が
  活発になり監視下にあります。


Q.  大地震の後、火山噴火があると聞きますが本当でしょうか?

A.  世界的に見ると、20世紀以降、M9程度の地震は6回発生していますが、
  いずれも数年以内に近くの火山が噴火しています。つまり100%の確率
  です。3:11以降3年が過ぎていますが、まだ、この1−2年注意が必要
  かもしれません。嬉しくない話ですが、日本は大地動乱時代に入って来て
  います。これから地震や火山が多発する模様です。


Q.  富士山噴火の可能性はどのくらい?

A.  火山学者は100%と言っています。大昔は50−100年の間隔で噴火し
  ていたようです。最後は1707年の宝永地震の49日後に大噴火して以
  来、300年間も静まっています。長く休んだ後の噴火は大きいのです。
  火山学者は声をそろえて富士山噴火はスタンバイ状態と言っています。実
  は3:11の4日後、3月15日に富士山直下を震源としM6.4の地震が起
  こり、富士宮市で震度6を記録しました。



  その後箱根山周辺で地震が頻発しています。ご存知のように、河口湖の水
  位低下、富士登山道路の亀裂など、富士山周辺に異変が起きています。火
  山周辺での地震の頻発は火山噴火の可能性を示していると言えるでしょう。
  琉球大学名誉教授の木村政昭氏は「私の試算では2011+3年。大雑把
  に言っても2020年までには噴火が起きる可能性は否定しきれない。」と
  断言しています。


Q.  突然、ボーンなの? 事前に噴火は予知できるのですか?

A.  地震は突然襲ってきますが、噴火には前兆があり、1ヶ月程度事前にわか
  ると言われています。それだけ、避難する余裕はあるということです。簡
  単に言えば、マグマが地表に向かって上昇してくるので、地震が多発する
  のです。初めは、低周波地震、マグマが上がってくると、体に感じる高周
  波地震、そして、火山微動と山体上部の1ミリ程度の膨張。

    

  また地下水の温度上昇などが見られます。富士山の場合、今すぐ噴火とい
  う兆候は無い様ですが、その1ヶ月の兆候が明日始まる可能性は否定でき  
  ないのです。いずれにしても気象庁で常時観測しているので、警告や避難
  勧告が出されます。


Q. 国は自治体は対処を始めているんですか?

A. はい。国と周辺3自治体は2013年4月9日に溶岩流を想定して噴火避難
 マップを策定。溶岩流の流れるルートなどで17パターンのシュミレーシ
 ョンを作っています。想定によると最大で避難民が75万人に及ぶ壮大な
 避難計画となります。ただ、東京での対策は具体的には取られていないよう
 です。


Q. 噴火するとどうなるんですか?

A. まず、空振(くうしん)という爆発による衝撃波がやってきます。近辺の建 
  物の窓ガラスなどが割れる可能性があります。それから、溶岩流、これは 
  流れ出たマグマです。温度は1000度にもなり触れるものは燃え尽くさ
  れます。スピードはゆっくりで、駿河湾まで到達するのに1週間程度と言
  われています。



  また、吹き上げられた火山岩塊が降ってきます。次に火砕流。溶岩片と火
  山ガスの混合体で時速100キロで地面を下ってきます。600−700度
  もあり、通り道にあったものは焼き払われ、生存者はあり得ません。さら
  に火山泥流。町ごと飲み込む泥の川です。これは時速60キロ程度。また、
  地震や噴火で大規模な崩壊が起こり山の型が変形してしまうこともありま
  す(山体崩壊)。残念ながら、今我々が見ている美しい富士山はいつまでも
  あの型なのではないのです。

  そして火山灰。火山灰が作物に積もると枯れ死するなどの被害が出る他、
  もし、2週間以上噴火が続くと、富士山周辺では1m−3mの降灰があると
  され、その重みで電線が切れたり、家屋がつぶれるなどの被害も出ます。
  300年前の噴火では横浜で10センチ、江戸で5センチの火山灰が積も
  ったそうです。

Q. そもそも火山灰とはどんなもの?

A. 溶岩はやって来ないとはいえ、火山灰被害は東京でも相当なものになると予
  想されます。噴煙は上空20キロの成層圏まで到達し、偏西風に乗って2
  時間ほどで、首都圏にやってきます。まず、知ってください。火山灰は灰
  というイメージとは違い、実はガラスを細かく砕いたものなのです。



  当然、肺に入れば、気管支が侵されますし、目に入れば角膜にダメージを
  及ぼします。まず、コンタクトレンズは使用できません。首都圏で125
  0万人に健康被害が出ると予測されています。火山灰は雪のように溶けま
  せん。除去しない限りづっとそこにあります。しかも重いのです。水で流
  してはいけません。固まってしまいます。スコップで集めて、袋にいれ、
  よそへ持って行くしかありません。


Q. 交通への影響は?

A.  予測では成田で4センチ、羽田で8センチ積もるようです。当然、飛行場
  は閉鎖されます。また、飛行中の飛行機のジェットエンジンに火山灰が入
  り込むとエンジンがストップします。実際、過去には、このような事故が
  ありました。道路は数ミリの降灰で車はスリップします。それ以上降れば、
  首都高などは閉鎖でしょう。幹線道路の灰除去に4日はかかるという試算
  もあります。また鉄道も運転見合わせとなり、多くの帰宅難民も出ます。
  もし、溶岩流が南に流れ駿河湾に到達するということになれば、新幹線、
  東名高速などもストップし東西の交通が遮断され東京は陸の孤島となる可
  能性があります。被害が大きくなる前に遠方へ避難することが望ましいで
  す。また、ガソリンなどもチェックしておきましょう。




Q.  ライフラインへの影響は?

A.  何しろ火山灰は重い、溶けない、そのうえ、ガラス質です。浄水場のフィ
  ルターに溜まれば、ろ過装置が機能しなくなります。長期の断水の可能性
  があります。また排水溝に詰まれば下水も使えなくなります。火力発電は
  大量の空気が必要です。その空気に火山灰が混じっていれば、発電機が止
  まり、首都圏大停電となります。


Q. メディア、通信への影響は?

A. 機械はホコリに弱いのです。コンピューターなどが誤作動したり停止したり
  する可能性が大です。そうすると今日、ライフラインも銀行ATMもすべて
   コンピュータ—制御なので、それらすべてが機能停止となります。また、電
   話やメールが使えないとなると世界都市東京から情報発信が出来なくなる
   という事態になり、世界的な問題となります。政府は被害総額を2兆5千億
  円としています。家庭では電子機器はプラスチックラップで保護しておきま
   しょう。


Q. 噴火に備えて、どうしたらいいの?

A. さすがに最近はどこの自治体でも地震対策が進んでいますが、意外と準備が
  なされていないのが、火山灰問題です。東京にこれほどの被害が出ること
  がわかっているのですから、もう少し住民に情報を与え、備えをすべきだと 
     思います。首都圏直下地震も富士山噴火も100年、200年先の話しでは
  なく、今年起っても全く不思議ではない状態なのです。
   
  まず、富士山周辺の方々は避難マップにしたがい、とにかく危険地域から
  出ることです。溶岩流、火砕流の通り道では生き残ることはあり得ません。
  ただ、1ヶ月ほどの余裕があるようですから、警報が出たらそれに従い、
  避難することです。

 東京は火山灰対策ですが、とにかく体に入れないことです。ゴーグル、マスク
 が必要です。コンタクトレンズは外してください。どうしても外出しなければ
 ならない時はレインコートなどを着て、玄関先で脱ぐようにして、家に灰を入れ
 ないようにしてください。基本的には屋内待機となるので、できれば灰の重さで
 潰れない、また灰が内部に入りにくいコンクリートの建物に避難することが望ま
 しいです。ライフラインがストップしますので、水、食料の備蓄(1週間程度)
 も必要です。基本的には地震対策と同じですので、すでに多くの家庭では備蓄を
 していると思います。また、停電も予想されますので、手回しライトも必要です。
 またATMがストップすることも考慮して、現金を手元に置いておいたほうがいい
 でしょう。

 多くの指定避難所では住民との事前コミュニケーションや準備が無い状態です。
 そこが避難所に指定されていることは分かっていても、どう運営されるのか話し
 合いがなされていない場合が多いのです。地震そして火山灰対策のためにも速や
 かに指定避難所と避難対象住民との話合いを始めて頂きたいです。地震と並行して
 火山被害についてもしっかりとした知識を得ることから始めましょう。


Q.  噴火災害の隠れた問題とは?

A.  噴火がいつまで続くか分からないということです。地震は数秒ですが、
  噴火は3日なのか、3ヶ月なのか、1年なのか分かりません。噴火してい
  る限り、火山灰が降ってきます。2000年9月1日、東京都は三宅島の
  噴火時、全島民の避難を決定し、3800人が本土へ避難しました。火山
  ガスの放出量は世界に例を見ないほどで、実に4年5ヶ月ぶりに島民は島
  に帰ることとなったのです。島内全地域が居住可能となったのは、噴火か
  ら10年半ぶりだったのです。2010年4月のアイスランドの火山噴火
  では欧州約30カ国の空港が一時閉鎖、1週間に10万便が欠航するとい  
  う事態になりました。被害が大きくなってからでは、避難しようにも交通
  網が断たれてしまうという問題があります。首都圏人口1300万人を避
  難させることは不可能ですが、東京都も富士山噴火は可能性ある問題とし
  て被害が長期化した場合の対応に取り組んで頂くことを切望します。

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*このQAは日本で指折りの火山学者であり、京都大学の名物教授である鎌田浩毅(かまた ひろき)氏のTV, ラジオインタビューの内容を参考にさせていただきました。
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一般社団法人 災害支援団体 クラッシュジャパン
次期東京災害対策担当
日本防災士機構公認 防災士

栗原一芳
crashkazu@gmail.com