2015年9月29日火曜日

連動する火山と地震





迫る伊豆諸島沖地震?
東京湾での津波の心配があるのは南海トラフ。こちらは予測では湾内は最大3mほどとされている。しかし、震源が近い、伊豆諸島沖地震となるとさらに大きな津波の恐れがある。琉球大学名誉教授の木村政昭氏によると、2018(±5)年までに伊豆諸島沖を震源とするM8級の地震がおこる可能性が大だという。木村氏は切迫している危険として釧路、日向灘、そして、伊豆諸島沖を震源とする大地震、そして富士山噴火(予測は2019まで)を揚げている。特に東京に影響を与える伊豆諸島沖地震について見てみよう。

ここは、北を八丈島東方沖、南を無人島の鳥島東方沖(伊豆小笠原海溝沿い)とした南北300Kmほどの大きさで、その震源域は関東大震災を凌ぐ。2013年11月、西之島沖合の海底火山が確認され、火山から絶え間なく溶岩が噴出して新島が出現した。島はどんどん成長している。木村氏の分析によると、この噴火は海底火山の噴火というより、東日本大地震と同じ原因で起きたと考えられるという。房総半島以南の伊豆・小笠原海溝は、太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界であり、何百年と圧力が加わり続け、西之島の地下のマグマ溜まりを押しつぶし2013年の噴火に至ったと考える。富士山のマグマ上昇に加え、三原山は1986年の噴火以来マグマが下がっていないことが確認されている。つまり太平洋プレートの力が衰えず、日本列島に圧力がかかり続けているという証拠と見られる。


(日本の火山)


富士周辺のみならず、関東では日光白根山、伊豆大島、新島、神津島、中部では焼岳、乗鞍岳、九州では鶴見岳、伽藍岳、九重山、阿蘇山、中の島、諏訪ノ瀬島などの火山周辺で地震が観測されている。富士山最後の噴火は1707年の宝永噴火だが、宝永地震(M8.4のいわゆる南海トラフ連動地震)の49日後に起こっている。


(宝永地震)


さらに、その4年前の1703年には房総沖を震源とするM8の元禄地震が起きている。最近では、2014年の9月27日御嶽山での噴火の後、同年、11月22日には、M6.7の大地震が長野北部で発生している。このように火山噴火と地震は連動している。世界的に見てもM9クラスの大地震の後は必ず火山噴火があったという。東日本大震災以降、火山活動が活発化していることは言うまでもない。今、火山や地震が増えているということは、日本列島のプレートが激しく動いているということだ。日本列島そして、伊豆・小笠原海溝でのプレート境界型地震が、富士山の噴火を誘発する可能性も捨てきれないとする。



(静岡新聞)

箱根山は依然、レベル2の火口周辺規制で、ロープウエイは止まっている。8月31日、静岡県西部御前崎を震源に震度3、9月1日に同地点で震度4(ちなみに御前崎には浜岡原発がある)、9月8日に、駿河湾を震源に震度3、9月9日に同地点で震度3。これらの地震は富士山周辺にストレスがかかっていることと関係しているようだ。



日向灘が危ない?!
9月14日午前9時50分に阿蘇山噴火の発表がなされた。専門家はマグマ噴火の可能性が高いとしている。気象庁はレベル2の火口周辺規制から、レベル3の入山規制に警戒を引き上げた。9月29日現在でもレベル3のまま。連続噴火継続と発表されている。火山活動は近辺との火山活動との関連を見ることも大事である。

(阿蘇噴火)


実は、今年、5月29日に鹿児島県尾久島町、口永良部島(くちのえらぶじま)で噴火、火口から10000メートル噴煙が吹き上げた。島から避難する人々の姿がニュースでも取り上げられていた。火砕流も発生している。2007121噴火警戒レベルが導入されて以初めて、レベル5の避難警告が出されている。ニュースで放映されなくなると大丈夫なのかと思いがちだが、現在もレベル5のままだ。

さらに、8月15日には桜島でレベル4の避難準備が出された。9月29日現在もレベル3の入山規制が続いており、火口上1300メートルの噴煙(中量)が上がっている。桜島は1914年(大正3)1月12日午前10時5分に大正の大噴火をしている。2日間火砕流が噴出し続け、これにより桜島と大隈半島が陸続きになった。実は同日、午後6時半頃、鹿児島市と桜島の間の海底を震源としてM7.1(震度6)の地震が発生し、1時間後に津波も発生している。

(九州火山図)

また、霧島山もレベル2(火口周辺規制)だ。鹿児島地方気象台は9月16日、鹿児島、宮崎境の霧島山・御体で火山性地震が15日午前から午後に20回発生したとする臨時の火山解説情報を出した。図で見る通り、九州で火山活動が異常に活発なのは明白なのだ。

琉球大学名誉教授の木村政昭氏は火山と地震の関係を調査し続け独自の理論を展開しているが、木村氏によると地震も火山もプレートの圧力という同原因によるという。つまり、プレートに押されスポイトのようにマグマ溜まりが圧縮され噴火が起こるというのだ。そうだとすれば、昨今の九州での諸火山の活発な活動は近海のプレートの圧力が強くなっていると考えられる。木村氏は阪神淡路大震災を引き起こしたと同じ日本列島断層(九州北部から四国北部そして大阪を経て能登半島の付け根まで伸びる東西の断層)の上にある別府湾沖と日向灘南部に監視が必要という。特に日向灘南部の地震空白地に大地震発生の緊急度が高いとしている。木村氏の予測はM8.7で発生は2014年(誤差±5年)としている。

————————————————————————————

一般社団法人 災害支援団体 クラッシュジャパン
次期東京災害対策担当
日本防災士機構公認 防災士

栗原一芳 (くりはら かずよし)
contact@crashjapan.com


2015年9月19日土曜日

スーパー台風高潮被害

津波だけではない、高潮注意!

フィリピンを襲ったスーパー台風は記憶に新しいが、温暖化により台風の進路が北寄りになってきている。近い将来、スーパー台風が東京を襲う可能性も出てきた。9月6日に放送されたNHKスペシャル「大避難」によると、最大風速80mだと、津波でなくても東京湾の高潮で潮位が5m上がるという。そうすると隅田川や荒川は氾濫し、川沿いの町が浸水する。とくに、墨田区、足立区、葛飾区という川の手ゼロメートル3区は1mは浸水してしまうという。そして2週間ほどは水が引かない。この地区には約180万人が住んでいる。3区の中に180万人を収容できる高い建造物は無い。そうすると区外へ避難するしかない。しかし、暴風が始まってからでは遅い。細い道は混雑し、区外へ出るための橋は車の行列となる。ともあれ、地震の津波だけでなく、台風による高潮による浸水も考慮しておかなければならない。



 (水害が予測される川の手3区)

台風の場合幸い、時間がある。進路やある程度の到達時間が予想できるゆえ、1日前、2日前の避難ができる。まだ、雨風が強まる前に、とくに避難の時間がかかる要援護者(障害者、高齢者)を危険地域から脱出させることができる。また比較的高い建物の3階以上に避難できるよう(垂直避難)、近所の建造物を調べ、前もって援助協力を結んでおくことも一案である。




(東京地形)

高潮や堤防決壊によって氾濫した水は、さらに低い方へと流れる。台東区で氾濫した荒川の水はさらに、隣の中央区へと流れ込む。大手町から日比谷あたりまで到達するという予測もある。「まさかここまでは」と思う正常化バイアスが働く。そうやって被害範囲が広がってゆく。予測はされているので想定外ではない!

(地下鉄入り口に掲示されている海抜)


東京水害 — 予測される被害

また、当然、交通やライフラインにも影響が出る。今回の常総市の浸水のように、上下水断水が長期化することもある。緊急トイレの用意が必須となる。首都直下大地震の時、東京23区で81万7千人がトイレ難民となる試算が出ているが、トイレが破壊されずとも、下水が使えなければ同じことになる。

また、水が引いた後、こんどは瓦礫やゴミ問題だ。大量の土砂やゴミをどこに捨てるのか?東京都心の場合、スペースが無いので難しい。伝染病防止の消毒も必要になる。川が氾濫しなくても集中豪雨により地形や、排水の不備などでも浸水する。都心の場合、水を吸い込む土壌が少ない。排水溝にものが詰まっていたり、豪雨で許容量を超えたりすると内水氾濫となる。以前、三鷹市で地下飲食店などが浸水した。




崖近くでは急傾斜地崩壊や地滑りも起こりうる。東京には結構急勾配な坂が多い。ちなみに全国には土砂災害危険箇所が52万カ所もある。また、東京では地下水が上昇してきており、大地震の際には、液状化に拍車をかけることにもなりうるだろう。



チリ沖地震から学ぶ — 防災は減災

9月16日、現地時間午後7時54分、南米チリ沖でM8.3の巨大地震が発生した。チリ北部沿岸に津波が押し寄せ、13名が死亡、6名が行方不明となっている。しかし、前回2010年2月M8級の同様の地震が起きた時には500名が亡くなっている。翌日、日本にも80センチほどの津波が押し寄せている。

さて、どうして犠牲者を減らせたのか? チリ当局は前回の地震から学び、インフラの整備、早期警報システム、都市計画に投資。前回は情報が混乱し、多くの犠牲者を出したが、今回、地震発生から数分後に海軍が津波警報を発令。100万人が避難した。また、建物の耐震化も進めていた。ここに防災の意味がある。防災により犠牲者を確実に減らせるのだ。

政府発表の南海トラフ地震の犠牲者予想は最悪で32万人。しかし、防災、訓練で6万人に減らせるという。9月6日放送のNHKスペシャル「大避難」では南海トラフで2分後に津波の初波が襲いかかる静岡県焼津市の取り組みが紹介されていた。地元高校の学生が焼津市の住民に訪問調査し、避難ルートや避難場所を聞いて回った。

(津波タワー 写真はイメージです。)


ある人は近くに指定避難場所があるにもかかわらず、建物の屋上で寒いということで、さらに遠くにある学校に避難することを考えていた。確かに、不便はあるだろうが、遠くの学校へ避難するには時間が足りないことがわかった。コンピューターによる津波シュミレーションでは飲み込まれてしまうのだ。まず命が助かることが大事なのだ。水や食料、トイレはそれからの話だろう。ある老人は避難所まで時間がかかりすぎ、津波に飲まれてしまうことが分かったので、近所の3階建の建物の上階に万が一の時、避難させてもらう約束を取り交わした。そこまでなら、2分以内で到達できる。「遠くより上へ」つまり、垂直避難である。このような取り組みで少しでも犠牲者を減らす努力がなされている。

「ここは大丈夫だ」ではなく、被害予測をしっかり受け止め、危機意識を持ち、しっかりと防災することが減災につながる。
—————————————————————  

一般社団法人 災害支援団体 クラッシュジャパン
次期東京災害対策担当
日本防災士機構公認 防災士

栗原一芳 (くりはら かずよし)
contact@crashjapan.com