2014年7月28日月曜日

国家的「危機」— 危機管理が迫られる時代



「危機管理」という概念が日本に普及した契機は、1962年のキューバ危機の時でした。当時の危機管理は「国家的危機に対する国家首脳の対処」のことでした。3:11以降、日本の会社や組織でも「危機管理」という言葉が語られるようになってきました。私自身も、あるキリスト教団体の危機管理主任をしています。自分の団体の職員が海外での事件に巻き込まれたら?大災害に遭ったら?誘拐されたら?などなどシュミレーションして対応を考える必要に迫られています。




「財団法人日本再建イニシアティブ」によると日本を襲う国家的危機は・・・


1.尖閣諸島に中国人市民が上陸する日 自衛隊との衝突?

2.1000兆を超える国家債務と国債暴落それに伴うハイパーインフレ

3.都市部ライフラインを狙うサイバーテロ

4.パンデミック(大流行性伝染病)

5.首都圏直下型地震

6.エネルギー危機 ホルムズ海峡閉鎖

7.北朝鮮崩壊と大量難民流入

8.核テロ 都心へ核ミサイルが、原発テロ

9.国家的少子化と人口減少。超高齢化社会。若者がクーデターを起こす日?!
 


危機管理とは「市民生活に重大な被害を生じさせる事象に対して、研究、予防、対処、修復する活動」であると定義されています。(防災士研修センター)


もちろん、救急事態への「対処」は言うまでもなく、その前後に拡大して考え備えることも必要なのです。防災は正に、そういった概念です。まずはやってくるであろう自然災害や危機事象を研究し情報を集め、「正しい恐れ」を持つ事からです。自然災害に関しては、防災が減災につながるのです。しかし、「危機意識」が無いと防災に取り組みません
 

「災いは忘れた頃にやってくる」

「備えあれば、憂いなし」







緊急時の命令系統、連絡経路を明確にしておく

危機管理においては現場近くにいる者が一時的な担い手となります。(現場主義)ですから、自然災害の避難勧告、避難指示は市区町村長が出す事になっています。緊急時には情報やコミュニケーションの混乱が起ります。それが危機を煽ってしまいます。ですから平常時に連絡方法、意思決定方法を決めておく必要があります。緊急時には意思決定は少人数によるトップダウンを原則とします。組織においては普段から信頼関係を築き、コミュニケーションを円滑にしておくことが重要です。「多すぎる情報」は情報が「全く無い」ことよりも良いのです。これは行政と住民との間でも同じです。また、会社、団体のリーダーや危機管理者自身が死亡、行方不明になった時の代理者を前もって決めておくことも大事です。

1994年1月17日、ロサンゼルスを襲ったM6.9のノースリッジ大地震。当時のクリントン大統領は地震発生後15分で第一報を受けました。1時間後には軍が出動して消火活動にあたり、死者は61名で済んだのです。一方、1995年1月17日M7.2の阪神淡路大震災が起ります。当時の村山首相が第一報を受け取ったのは1時間50分後。翌朝は財界人と朝食会、ほとんど何もしなかったのです。この違いで6433名が死亡。「天災の後に人災が来た」と言われていますが、同じ事が3:11でも繰り返されたのではないでしょうか?福島第一原発は、それでも幸運が重なり、あの程度で収まりました。東日本が壊滅状態になることも十分あり得たのです。



災害は弱いものいじめ

フィリピンのスーパー台風被害を覚えていますか?


海岸沿いのバラックのような建物は倒壊してしまいました。あれが頑丈な鉄筋のビルだったらどうだったでしょうか?残念なことですが、災害は「弱いものイジメなのです。つまり物理的に弱いもの(脆弱な造りの建物)、人的に弱いもの(高齢者や障害者)に被害が集中してしまうのです。それがわかっているので、事前の備えが必要になります。防災は堤防を高くするなど、行政のレベルでの取り組みもあれば、個人レベルでの、建物の耐震化や家具の固定などの取り組みがあるでしょう。また、市民共同体レベルでの取り組みもあります。高齢者の「みまわり隊」ボランティアや災害時に車いすの人を運ぶボランティア体制などです。このように「支援」ボランティアだけでなく、「防災ボランティア」も必要なのです。

「今日、70%の確率で雨が降ります。」と天気予報を聞いたら、大方の人は傘を持って外出するでしょう。雨が降っても傘をさせば、ほとんど濡れない(被害を受けない)で済むからです。これはある意味での防災です。防災すれば減災できるのです。「南海トラフ」も「首都直下」も今後30年で70%の発生確率です。大地震をストップすることは出来ませんが、備えることで、災害を減らすことはできるのです。



国家的危機対応の必要性




解釈改憲による集団的自衛権行使が容認された今日、日本が戦争に巻き込まれる可能性も出て来ました。大災害の危険性も指摘されています。戦後70年を迎える今、国が激変することがあり得る時代に入っているのです。ますます「危機管理」の重要性が増しています。こわいのは、日本が戦争やテロの対象となると、日本にある54基の原発が狙われるということです。それらは地上にむき出しのまま建っているのです。原子爆弾を落とさなくても、原発めがけてミサイルを打てば、日本は壊滅的なダメージを負ってしまいます。軍備を増強するより、まず原発を廃止し、核物質を地下深くに埋めるなどするほうが、よっぽど緊急のような気がします。

(福島第一原発 3号基爆発)



このブログでも以前指摘しましが、南海トラフでは被害総額予測220兆円、首都圏直下地震では95兆円と試算されています。しかし、これは原発被害を入れていません。また、首都東京が壊滅的ダメージを受ければ、国債や為替レートの暴落や、ハイパーインフレなど経済的災害が起る可能性があります。




さらにダメージが限度を超えるとさすがの日本人も礼儀正しく振る舞ってもいられず、略奪、強奪といった犯罪も増加することも考えられます。災害時には「デマ」「流言」が飛び交い二次災害が起ります。ヘイトスピーチなどが行われている新大久保などでは、関東大震災時のような在日韓国人、中国人への暴動、虐殺が起きる可能性もあります。危機対応の体制つくりが迫られています。

そして、日頃から顔の見える「愛と信頼のコミュニティ」を築いてゆくことが何よりも大きな防災となるのです。

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関連テーマ参考本

「日本最悪のシナリオ9つの死角」  日本再建イニシアティブ   新潮社
「国家破産パニック」                浅井隆 第二海援隊
「危機対応 最初の48時間」   ケビン・エラーズ著 いのちのことば社

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一般社団法人 災害支援団体 クラッシュジャパン
次期東京災害対策担当
日本防災士機構公認 防災士

栗原一芳
contact@crashjapan.com




2014年7月7日月曜日

地域教会防災ネットワーク


 

昨年12月に内閣府中央防災会議より、首都圏直下型地震の被害予測アップ
デートが発表されました。それによると死者が前回想定の2.5倍の23000人、(うち、火災による死者が7割の16000人)となっています。災害時は同時多発的に火災、負傷者が多数発生し、消防署などの公共の助けはすぐには来ません。また、5割で断水、停電が起こり復旧に1ヶ月程度かかるもようです。一般道、JRも復旧に1ヶ月程度と交通も長期的にマヒします。

(火災予測)


そうすると、どうしても歩いてゆける距離で、お互い助け合って行くことが必要になってます。その地にある神の家族である教会が、まずお互いどう助け合っていけるのか。また、どう地域の助けになっていけるのか。関係者が顔を合わせて話し合う必要があるのではないでしょうか

その必要を覚えて、先ずはクラッシュの本部のある東久留米、清瀬、新座エリアの教会に呼びかけミーティングを重ねて来ました。会場を各教会持ち回りで、信徒も参加して頂き、回を重ねるごとに仲間意識が生まれてきています。現時点で10数の教会とクリスチャン学校、老人ホームなどがネットワークされています。



台東区で行われた「教会防災ネットワークつくり」セミナーでの救世軍による給食車の実演。



台東区は、昨年秋、上野ホーリネス教会の牧師が呼びかけ人となり5つほどの教会がネットワークされています。昨年、10月8日には上野ホーリネス教会を会場に、荒川沿いの教会に呼びかけワンデイ防災教会ネットワークセミナーを開催させて頂きました。そこに参加された板橋区の牧師達が必要を感じ、今年4月にネットワークを立ち上げました。


クラッシュジャパン次期東京災害対策担当の栗原は、現在までに30回程、教会、教団、牧師会、ビジネスマン集会、地域コミュニティ対象の防災啓発セミナーを行って参りました。いい意味での「危機感」を持って頂かないと、なかなか真剣に防災に取り組んで頂けません。セミナーをきっかけに防災に取り組み始めた教会もあります。首都圏震災の場合、避難所/支援拠点となる可能性のある大きな会堂が多い新宿区の大久保通りの教会にも呼びかけて、ネットワークが立ち上がりました。

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ネットワークの目的は「助けー助けられる、顔の見える防災コミュニティの創出」です。


1)防災のための地域牧師会を持つ、顔を合わせる

   地域によっては牧師会の無いエリアもあります。まず、顔を会わせる「場」
   を作れれば、目的の半分は達成されたと言ってもいいでしょう。災害時には
   交通がストップしますので、歩いて行ける距離の範囲が理想です。
 
2)賛同教会の連絡先リストを共有する。教会の防災情報交換。

  メールアドレス共有は基本ですが、さらに、地域ネットワークのフェイス
  ブック上での非公開グループを作ることをお薦めします。写真も掲載でき
  ますので、より効果的にメンバーに情報を提供できます。また、掲載され
  た記事に対してすぐに、コメントで応答できます。災害時には被災状況、
  具体的な支援要請などを知らせるのに大変役立ちます。

3)避難所マップ、ハザードマップを見ながら教会の所在地を確認


  市役所、区役所でハザードマップ(洪水時)と避難所マップをもらってき
  て、それを見ながら、ネットワーク教会がどこにあるかマップ上で付箋紙
  を貼って確認します。さらにそれをフェイスブックやブログ上に載せれば、
  皆さんが、情報を共有できます。通常、エリアネットワークでは、ミーテ
  ィング会場を教会持ち回りにします。そのことで実際に他教会を訪問し、
  見学することができます。

4)信徒リソースをネットワークする。

  信徒さんの中には、インターネットの技術を持つ人や、大工、看護婦、
  医者などがいらっしゃる場合があります。自分の教会に無いリソースを他
  の教会が持っている場合もあります。ネットワークすることで、リソース
  を共有しましょう。人材だけでなく、発電機や援助活動のツールであるジ
  ャッキやバールを共有することもできます。

5)教会と行政、地域コミュニティとの連携。町ぐるみの防災の一端を担う。

  社会福祉協議会や自治体の防災課が市民ボランティア養成講座を提供した
  り、防災情報交換のミーティングを持ったりしています。積極的に参加し
  ましょう。教会だけでなく、キリスト教主義の学校や施設も積極的に地域
  社会にかかわって頂きたいです。それにより地域社会と接点ができます。
  教会ネットワークができたら、どうしたら地域社会に貢献できるか、自治
  体や社会福祉協議会と話し合いましょう。特に大きな会堂のある教会は避
  難所や支援物資拠点として地域に貢献でき、自治体の助けともなります。
  
  災害は「弱い者いじめ」です。被災者の多くは高齢者や障害者です。震災
  前の「防災ボランティア」として、そのようなニーズのある方々の防災を
  助けてあげる事も出来ます。ある自治会ではボランティアを募って、高
  齢者の「見回り隊」を実行しているところもあります。震災前にできるボ
  ランティア活動も沢山あります。

6)災害時の支援受け皿として機能 
      
  地域ネットワークは、震災時、外部からの支援(クラッシュ、サマリタン
  パースなど)を受ける窓口として機能できます。ネットワークがあると外
  部からの支援活動が迅速かつ効果的にできます。被災地の状況やニーズを
  迅速に支援団体に伝えられます。また外部ボランティアの滞在先など迅速
  に決定できます。ゼロからコネクションをつくるエネルギーを省けます。

7)他地域の同様のネットワークとの広域連帯。災害時の相互協力のため。

  地域ネットワーク同士を結びつける広域ネットワーク。1つのエリアで大
  きなダメージを負った時、他のエリアのネットワークが支援の手を差し伸
  べることができます。首都直下地震では都心では震度7もあり、甚大なダ
  メージが出ますが、郊外のネットワークが助けられる可能性があるかも知
  れません。現在、各エリアのネットワークでフェイスブックの非公開グル
  ープを作っていただいています。さらに世話人同士がネットワークできる
  全体の「教会防災ネットワーク」のページを作成しています。このページ
  には首都圏全体のどこにネットワークがあるのか一目で見られるようなマ
  ップを掲載することを考えています。


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米国ホイートン大学の人道災害研究所(HDI)所長のボーエン博士は、教会が防災、支援に関わるときの誤った認識として以下をあげています。


1.災害ミニストリーとは救援活動を行う事である。
  そうすると災害のピーク時にフォーカスを合わせるので、長期的な課題を
  無視してしまう。

2.災害ミニストリーとは、被災直後の生存者達へのケアである
  地域コミュニティの力がもともと弱く、教会の援助も直後のケアに限られ
  ていると災害弱者である高齢者や障害者が一番必要とする長期的なケアが
  無視されることになる。教会こそコミュニティの中で弱者に継続的に関わ
  ってゆくべき。

3.災害支援活動はプロの組織のほうがうまくできる。
  災害は不公平、支援の欠如、不当な仕打ち、資源へのアクセスの欠如など
     で苦しんでいる人たちを暴露(expose)することによって、コミュニティと被 
  造物を購う必要性を明らかにする。その意味では災害は、贖罪を与え
  る主体としての教会に、コミュニティの基本的ニーズを明らかにします。
  災害は教会にとって単なる宣教の機会ではなく、コミュニティにおける教
  会の働きの必要性を明らかにするものなのです。教会の働きは第一義的に
  災害時の専門家としてではなく、コミュニティと被造物の購いを達成する
  組織としての働きなのです。


小学校での災害時炊き出し体験

そして、よりよくコミュニティに仕えていくためには、地域の教会がネットワークされ協力して地域に貢献してゆくことが求められるのです。さらに、東京の各地でネットワークが立ち上げられることを切望しております。

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一般社団法人 災害支援団体 クラッシュジャパン
次期東京災害対策担当
日本防災士機構公認 防災士

栗原一芳
contact@crashjapan.com