2014年7月7日月曜日

地域教会防災ネットワーク


 

昨年12月に内閣府中央防災会議より、首都圏直下型地震の被害予測アップ
デートが発表されました。それによると死者が前回想定の2.5倍の23000人、(うち、火災による死者が7割の16000人)となっています。災害時は同時多発的に火災、負傷者が多数発生し、消防署などの公共の助けはすぐには来ません。また、5割で断水、停電が起こり復旧に1ヶ月程度かかるもようです。一般道、JRも復旧に1ヶ月程度と交通も長期的にマヒします。

(火災予測)


そうすると、どうしても歩いてゆける距離で、お互い助け合って行くことが必要になってます。その地にある神の家族である教会が、まずお互いどう助け合っていけるのか。また、どう地域の助けになっていけるのか。関係者が顔を合わせて話し合う必要があるのではないでしょうか

その必要を覚えて、先ずはクラッシュの本部のある東久留米、清瀬、新座エリアの教会に呼びかけミーティングを重ねて来ました。会場を各教会持ち回りで、信徒も参加して頂き、回を重ねるごとに仲間意識が生まれてきています。現時点で10数の教会とクリスチャン学校、老人ホームなどがネットワークされています。



台東区で行われた「教会防災ネットワークつくり」セミナーでの救世軍による給食車の実演。



台東区は、昨年秋、上野ホーリネス教会の牧師が呼びかけ人となり5つほどの教会がネットワークされています。昨年、10月8日には上野ホーリネス教会を会場に、荒川沿いの教会に呼びかけワンデイ防災教会ネットワークセミナーを開催させて頂きました。そこに参加された板橋区の牧師達が必要を感じ、今年4月にネットワークを立ち上げました。


クラッシュジャパン次期東京災害対策担当の栗原は、現在までに30回程、教会、教団、牧師会、ビジネスマン集会、地域コミュニティ対象の防災啓発セミナーを行って参りました。いい意味での「危機感」を持って頂かないと、なかなか真剣に防災に取り組んで頂けません。セミナーをきっかけに防災に取り組み始めた教会もあります。首都圏震災の場合、避難所/支援拠点となる可能性のある大きな会堂が多い新宿区の大久保通りの教会にも呼びかけて、ネットワークが立ち上がりました。

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ネットワークの目的は「助けー助けられる、顔の見える防災コミュニティの創出」です。


1)防災のための地域牧師会を持つ、顔を合わせる

   地域によっては牧師会の無いエリアもあります。まず、顔を会わせる「場」
   を作れれば、目的の半分は達成されたと言ってもいいでしょう。災害時には
   交通がストップしますので、歩いて行ける距離の範囲が理想です。
 
2)賛同教会の連絡先リストを共有する。教会の防災情報交換。

  メールアドレス共有は基本ですが、さらに、地域ネットワークのフェイス
  ブック上での非公開グループを作ることをお薦めします。写真も掲載でき
  ますので、より効果的にメンバーに情報を提供できます。また、掲載され
  た記事に対してすぐに、コメントで応答できます。災害時には被災状況、
  具体的な支援要請などを知らせるのに大変役立ちます。

3)避難所マップ、ハザードマップを見ながら教会の所在地を確認


  市役所、区役所でハザードマップ(洪水時)と避難所マップをもらってき
  て、それを見ながら、ネットワーク教会がどこにあるかマップ上で付箋紙
  を貼って確認します。さらにそれをフェイスブックやブログ上に載せれば、
  皆さんが、情報を共有できます。通常、エリアネットワークでは、ミーテ
  ィング会場を教会持ち回りにします。そのことで実際に他教会を訪問し、
  見学することができます。

4)信徒リソースをネットワークする。

  信徒さんの中には、インターネットの技術を持つ人や、大工、看護婦、
  医者などがいらっしゃる場合があります。自分の教会に無いリソースを他
  の教会が持っている場合もあります。ネットワークすることで、リソース
  を共有しましょう。人材だけでなく、発電機や援助活動のツールであるジ
  ャッキやバールを共有することもできます。

5)教会と行政、地域コミュニティとの連携。町ぐるみの防災の一端を担う。

  社会福祉協議会や自治体の防災課が市民ボランティア養成講座を提供した
  り、防災情報交換のミーティングを持ったりしています。積極的に参加し
  ましょう。教会だけでなく、キリスト教主義の学校や施設も積極的に地域
  社会にかかわって頂きたいです。それにより地域社会と接点ができます。
  教会ネットワークができたら、どうしたら地域社会に貢献できるか、自治
  体や社会福祉協議会と話し合いましょう。特に大きな会堂のある教会は避
  難所や支援物資拠点として地域に貢献でき、自治体の助けともなります。
  
  災害は「弱い者いじめ」です。被災者の多くは高齢者や障害者です。震災
  前の「防災ボランティア」として、そのようなニーズのある方々の防災を
  助けてあげる事も出来ます。ある自治会ではボランティアを募って、高
  齢者の「見回り隊」を実行しているところもあります。震災前にできるボ
  ランティア活動も沢山あります。

6)災害時の支援受け皿として機能 
      
  地域ネットワークは、震災時、外部からの支援(クラッシュ、サマリタン
  パースなど)を受ける窓口として機能できます。ネットワークがあると外
  部からの支援活動が迅速かつ効果的にできます。被災地の状況やニーズを
  迅速に支援団体に伝えられます。また外部ボランティアの滞在先など迅速
  に決定できます。ゼロからコネクションをつくるエネルギーを省けます。

7)他地域の同様のネットワークとの広域連帯。災害時の相互協力のため。

  地域ネットワーク同士を結びつける広域ネットワーク。1つのエリアで大
  きなダメージを負った時、他のエリアのネットワークが支援の手を差し伸
  べることができます。首都直下地震では都心では震度7もあり、甚大なダ
  メージが出ますが、郊外のネットワークが助けられる可能性があるかも知
  れません。現在、各エリアのネットワークでフェイスブックの非公開グル
  ープを作っていただいています。さらに世話人同士がネットワークできる
  全体の「教会防災ネットワーク」のページを作成しています。このページ
  には首都圏全体のどこにネットワークがあるのか一目で見られるようなマ
  ップを掲載することを考えています。


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米国ホイートン大学の人道災害研究所(HDI)所長のボーエン博士は、教会が防災、支援に関わるときの誤った認識として以下をあげています。


1.災害ミニストリーとは救援活動を行う事である。
  そうすると災害のピーク時にフォーカスを合わせるので、長期的な課題を
  無視してしまう。

2.災害ミニストリーとは、被災直後の生存者達へのケアである
  地域コミュニティの力がもともと弱く、教会の援助も直後のケアに限られ
  ていると災害弱者である高齢者や障害者が一番必要とする長期的なケアが
  無視されることになる。教会こそコミュニティの中で弱者に継続的に関わ
  ってゆくべき。

3.災害支援活動はプロの組織のほうがうまくできる。
  災害は不公平、支援の欠如、不当な仕打ち、資源へのアクセスの欠如など
     で苦しんでいる人たちを暴露(expose)することによって、コミュニティと被 
  造物を購う必要性を明らかにする。その意味では災害は、贖罪を与え
  る主体としての教会に、コミュニティの基本的ニーズを明らかにします。
  災害は教会にとって単なる宣教の機会ではなく、コミュニティにおける教
  会の働きの必要性を明らかにするものなのです。教会の働きは第一義的に
  災害時の専門家としてではなく、コミュニティと被造物の購いを達成する
  組織としての働きなのです。


小学校での災害時炊き出し体験

そして、よりよくコミュニティに仕えていくためには、地域の教会がネットワークされ協力して地域に貢献してゆくことが求められるのです。さらに、東京の各地でネットワークが立ち上げられることを切望しております。

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一般社団法人 災害支援団体 クラッシュジャパン
次期東京災害対策担当
日本防災士機構公認 防災士

栗原一芳
contact@crashjapan.com

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