2015年9月19日土曜日

スーパー台風高潮被害

津波だけではない、高潮注意!

フィリピンを襲ったスーパー台風は記憶に新しいが、温暖化により台風の進路が北寄りになってきている。近い将来、スーパー台風が東京を襲う可能性も出てきた。9月6日に放送されたNHKスペシャル「大避難」によると、最大風速80mだと、津波でなくても東京湾の高潮で潮位が5m上がるという。そうすると隅田川や荒川は氾濫し、川沿いの町が浸水する。とくに、墨田区、足立区、葛飾区という川の手ゼロメートル3区は1mは浸水してしまうという。そして2週間ほどは水が引かない。この地区には約180万人が住んでいる。3区の中に180万人を収容できる高い建造物は無い。そうすると区外へ避難するしかない。しかし、暴風が始まってからでは遅い。細い道は混雑し、区外へ出るための橋は車の行列となる。ともあれ、地震の津波だけでなく、台風による高潮による浸水も考慮しておかなければならない。



 (水害が予測される川の手3区)

台風の場合幸い、時間がある。進路やある程度の到達時間が予想できるゆえ、1日前、2日前の避難ができる。まだ、雨風が強まる前に、とくに避難の時間がかかる要援護者(障害者、高齢者)を危険地域から脱出させることができる。また比較的高い建物の3階以上に避難できるよう(垂直避難)、近所の建造物を調べ、前もって援助協力を結んでおくことも一案である。




(東京地形)

高潮や堤防決壊によって氾濫した水は、さらに低い方へと流れる。台東区で氾濫した荒川の水はさらに、隣の中央区へと流れ込む。大手町から日比谷あたりまで到達するという予測もある。「まさかここまでは」と思う正常化バイアスが働く。そうやって被害範囲が広がってゆく。予測はされているので想定外ではない!

(地下鉄入り口に掲示されている海抜)


東京水害 — 予測される被害

また、当然、交通やライフラインにも影響が出る。今回の常総市の浸水のように、上下水断水が長期化することもある。緊急トイレの用意が必須となる。首都直下大地震の時、東京23区で81万7千人がトイレ難民となる試算が出ているが、トイレが破壊されずとも、下水が使えなければ同じことになる。

また、水が引いた後、こんどは瓦礫やゴミ問題だ。大量の土砂やゴミをどこに捨てるのか?東京都心の場合、スペースが無いので難しい。伝染病防止の消毒も必要になる。川が氾濫しなくても集中豪雨により地形や、排水の不備などでも浸水する。都心の場合、水を吸い込む土壌が少ない。排水溝にものが詰まっていたり、豪雨で許容量を超えたりすると内水氾濫となる。以前、三鷹市で地下飲食店などが浸水した。




崖近くでは急傾斜地崩壊や地滑りも起こりうる。東京には結構急勾配な坂が多い。ちなみに全国には土砂災害危険箇所が52万カ所もある。また、東京では地下水が上昇してきており、大地震の際には、液状化に拍車をかけることにもなりうるだろう。



チリ沖地震から学ぶ — 防災は減災

9月16日、現地時間午後7時54分、南米チリ沖でM8.3の巨大地震が発生した。チリ北部沿岸に津波が押し寄せ、13名が死亡、6名が行方不明となっている。しかし、前回2010年2月M8級の同様の地震が起きた時には500名が亡くなっている。翌日、日本にも80センチほどの津波が押し寄せている。

さて、どうして犠牲者を減らせたのか? チリ当局は前回の地震から学び、インフラの整備、早期警報システム、都市計画に投資。前回は情報が混乱し、多くの犠牲者を出したが、今回、地震発生から数分後に海軍が津波警報を発令。100万人が避難した。また、建物の耐震化も進めていた。ここに防災の意味がある。防災により犠牲者を確実に減らせるのだ。

政府発表の南海トラフ地震の犠牲者予想は最悪で32万人。しかし、防災、訓練で6万人に減らせるという。9月6日放送のNHKスペシャル「大避難」では南海トラフで2分後に津波の初波が襲いかかる静岡県焼津市の取り組みが紹介されていた。地元高校の学生が焼津市の住民に訪問調査し、避難ルートや避難場所を聞いて回った。

(津波タワー 写真はイメージです。)


ある人は近くに指定避難場所があるにもかかわらず、建物の屋上で寒いということで、さらに遠くにある学校に避難することを考えていた。確かに、不便はあるだろうが、遠くの学校へ避難するには時間が足りないことがわかった。コンピューターによる津波シュミレーションでは飲み込まれてしまうのだ。まず命が助かることが大事なのだ。水や食料、トイレはそれからの話だろう。ある老人は避難所まで時間がかかりすぎ、津波に飲まれてしまうことが分かったので、近所の3階建の建物の上階に万が一の時、避難させてもらう約束を取り交わした。そこまでなら、2分以内で到達できる。「遠くより上へ」つまり、垂直避難である。このような取り組みで少しでも犠牲者を減らす努力がなされている。

「ここは大丈夫だ」ではなく、被害予測をしっかり受け止め、危機意識を持ち、しっかりと防災することが減災につながる。
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一般社団法人 災害支援団体 クラッシュジャパン
次期東京災害対策担当
日本防災士機構公認 防災士

栗原一芳 (くりはら かずよし)
contact@crashjapan.com



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