(相模トラフ新予測)
東京の地震の発生確率は下がったの?上がったの?
最近、ある人と話していて「東京の地震は30年で5%になったと新聞記事で読んだ。発生確率が低くなったのかな。」そういった記事を見た人もいるだろう。ただ、誤解しないように、説明が必要だ。これは、関東大震災を引き起こした相模トラフを震源とする海洋型地震の話しで、東京の真下を震源とする内陸型直下地震の話ではない。内陸型直下地震のほうは東京湾北部を震源とする可能性は低くなったものの、都心南部を震源とするM7級(最大震度7)の地震は今だに30年で70%という高確率だ。相模トラフを震源とする地震は、30年では0%−2%だったのが、3:11を契機に確率が高まったとして5%に引き上げられている。したがって確率は下がったのではなく上がったのだ。
関東を襲う地震にはどういうタイプがあるの?
図のように関東は北米プレートに乗っているが、そこに南からフィリピン海プレートが潜り込んでいる。そのプレッシャーで地震が起るが、以下の3つのタイプがある。
1.相模湾海底のプレートの境目で起る海溝型地震
震源は海の底。古くは元禄地震、また、1923年の関東大震災はこれにあたる。海溝型は内陸型より規模が大きく、また津波災害も起こす。
2.潜り込mフィリピン海プレートと上に乗っている関東の陸地との軋轢で起る内陸型
震源は首都圏の真下となる。M7級が関東大震災型海溝地震の前に数回起ると言われている。震源が割合浅い地点で直下であるため、M7でも最大震度7となる。
3.関東の陸地にある断層が動く断層型地震
すでにひび割れがある断層が何らかのプレッシャーで動いてしまう。発生確率は低
く、被害エリアは局地的だが、一度起れば、断層上のエリアは甚大な被害が出る。阪
神淡路大震災はこのケース。ちなみに、関東では高確率順に、富士川河口断層帯(1
0−18%)、神奈川県の松田断層帯(0.2−16%)、そして立川断層帯(0.5
−2%)となっている。
(関東活断層)
相模トラフで起った地震、これから起る地震
関東南部の地下は、フィリピン海プレートと呼ばれる海側のプレートが陸側のプレートの下に年間4センチほど沈み込んでいる。2つのプレートの境目では、神奈川県から房総半島の西に当たる領域を震源域として、90年前に関東大震災を引き起こした巨大地震が発生している。さらにおよそ300年前には、神奈川県から房総半島の東の沖合にかけての領域を震源域として元禄型巨大地震(M8)が発生している。つまりこの周辺は、マグニチュード8クラスの地震が繰り返されてきたことになる。
1677年の延宝地震(M8)の時は、大津波が発生し、いわきから房総にかけて死者、不明者500名以上の犠牲者が出た。1703年の元禄地震(M8.2)の時は、関東の陸地も震源域に入り、東京で震度6、横浜で、外房で震度7だった。津波による死者は2300人以上。小田原で被害大。津波は外房で3−5m、東京湾内は2m。1923年の関東大震災では、M7.9。最も震度が大きかったのは小田原付近で、津波は東京湾奥で0.3−0.4mであった。
1953年の房総沖地震(M7.4)以来、この方面では大きな地震が不気味に途絶えている。最近、このエリアでスロースリップが確認されており、これでプレッシャーが抜けたのか、巨大地震の前触れなのか、専門家でも意見が分かれているようだ。
関東大震災(1923年)を引き起こした巨大地震は、神奈川県から房総半島の西を震源域として発生したが、最新の研究で、房総半島の東側でマグニチュード8クラスの巨大な地震が起きる可能性があることが分かり、専門家が調査を進めている。震源域は相模湾と房総半島南東沖に大別され、前者は関東大震災の震源域で、両者が連動すると大規模な元禄型関東地震が発生。ただし房総半島南東沖が単独で地震を起こすことは想定されていなかった。しかし、2012年3月26日、房総半島南端から南東に百数十キロ以上離れた太平洋の海底に、これまで存在が知られていなかった長大な2つの活断層が存在するとの調査結果を、広島大や名古屋大、海洋研究開発機構などの研究グループが25日までにまとめたというニュースが入った。長さは160キロと300キロ以上で、一度にそれぞれの断層全体が動けば、いずれもマグニチュード(M)8~9の地震を起こす可能性があるという。
産業技術総合研究所の宍倉正展チーム長は、房総半島の東側ではこれまで知られていない巨大地震が起きていた可能性があると指摘している。宍倉氏は「関東では未知のタイプの地震が起きていた可能性がある。首都のすぐ近くで巨大地震が起きるかもしれないと考えておく必要がある」と話している。
(房総沖地震)
国の中央防災会議でも、新想定に延宝房総沖地震(1677年)の評価を初めて盛り込んだ。揺れに比べ津波が大きい「津波地震」の可能性が高いとして、日本海溝と伊豆・小笠原海溝をまたぐ領域に震源域を設定。この領域のプレート境界地震の発生確率は30年以内に7%で、東日本大震災の影響で誘発される可能性がある。房総半島の太平洋側を中心に6~8メートル、最大で17メートルの津波を想定し、対策を求めている。
火山と大地震の連鎖
琉球大学名誉教授の木村政昭氏によると、南関東の大地震にはパターンがあるという。まず、火山の大噴火それから、東北、北海道での地震のシリーズ、つぎに三宅島や大島三原山が小噴火する、そのあとにやってくるのが南関東の大地震だという。今回、すでに三宅島での大噴火、北海道、東北の地震シリーズは終わっている。そして、3:11の後、大島付近を震源とする地震があったり、三宅島の小噴火があったりしている。
1912年 大島三原山噴火 11年後 1923年 関東大震災(M7.9)
1950年 大島三原山噴火 3年後 1953年 房総沖地震(M7.4)
2000年 三宅島大噴火 11年後 2011年 東日本大震災(M9.0)
このように火山の噴火後、計算したように大地震が起っているという。また、世界的に見ると、20世紀以降、M9程度の地震は6回発生しているが、いずれも数年以内に近くの火山が噴火している。火山噴火と地震は密接な関係があると言える。木村氏は富士山の噴火がかなり緊迫していると見ている。木村氏は富士山噴火は2015年までに、房総沖地震の時期は2009年から2015年の間(M7.8)、可能性が大だという。
国は、関東大震災型のM8級、海洋型地震も長期的対策の対象とすることにした。内陸型直下地震よりも発生確率はぐんと低いが、一度起れば、その被害は内陸型の比ではない。これが起ると死者7万人、被害総額160兆円(内陸直下型では95兆円でほぼ国家予算)。神奈川、千葉に6−8mの津波と予想されている。
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一般社団法人 災害支援団体 クラッシュジャパン
次期東京災害対策担当
日本防災士機構公認 防災士
栗原一芳
crashkazu@gmail.com