地震発生率はどれだけ正確か?
首都圏直下型地震の発生確率は内閣府中央防災会議発表では、今後30年で70%となっているが、東大の平田教授の予測では今後4年で50%(発表当初 4年で70%であったが後に修正された。)。また京都大学によると今後5年で28%となっている。大分、数字が違うのがお分かりだろう。予測のシュミレーションにどのようなデータを使うかで確率が変わってくる。プレスリップにより直前予測できるのは東海地震のみ、として政府はこれだけを警戒していたが、実際は2011年3月11日、東日本大震災が起ってしまった。しかも、N9.0という「想定外」の巨大さであった。想定外といえば、阪神淡路大震災の発生確率は0.02%—8%だったが起ってしまった! 今では当たり前になっているプレート移動(プレートテクニクス理論)も70代半ばには、まだ胡散臭いものとして見られていた。地震予測の研究はほんの最近の話なのだ。そこで政府発表も一応踏まえつつも、独自の理論でユニークな発想をしている学者の意見にも耳を傾けてみたい。
「地震の目」理論
海洋地震学者で琉球大学名誉教授の木村政昭氏は一番緊迫している危機は富士山噴火で、2015年と予測している。正確には2011プラス誤差4年なのだが、すでに2014年が終わろうとしている。木村氏は、86年の伊豆大島三原山噴火、91年の雲仙普賢岳噴火を予知、95年の阪神淡路大震災、2004年の新潟県中越沖地震を事前予測、そして2011年の東日本大震災をわずかな誤差で予測していた。2007年6月、太平洋学術会議において、木村氏は「都市を水没させるような地震はこれからも起る」と題した講演を行った。その時の展示パネルに、東日本沖に2005+5年(誤差)でM8の巨大地震が起ると記されていた。
木村氏は火山も地震もプレートの移動による圧迫という同じ原因によるものと考えている。一般には「地震空白域」を見出し、次に起る場所を推定する方法を取っている。東海地震など過去の地震から160年も経っているので、いつ起きてもおかしくないとする。これは1960年代から70年代にかけて確率された手法だという。しかし、その後、空白地で地震が起きず、他の地域で地震が起る現象が度重なった。そこで、木村氏は空白地で人に感じられないような小さな地震が活発化すると、そこに大地震が起ることをつきとめ、それを「地震の目」と命名した。それによると直近のところでは、日向灘(2010+5年M8.5)。これは確実に桜山や阿蘇山に影響し、川内原発にも危険が及ぶ。東京に関係するところでは小笠原海溝沿いプレートで(2012+5年)でM8.5が予測されるという。すでに小笠原海溝付近の西之島新島が昨年誕生し、成長を続け、ついに西之島本島と陸つなぎになったのは記憶に新しい。太平洋プレートが東から西へ圧力を加えている。その結果として東日本大震災があった。それにより、東北地方太平洋沖は圧力が解消した可能性は高いが、震源域の南(房総沖から小笠原海溝)は圧力が溜まっているというのは理にかなう。そして、それが富士山にプレッシャーをかけているという。
富士山噴火5つの兆候
3:11の震源域で断層破壊が起らなかった南隣、すなわち房総沖では、圧力が解消されていない。それで房総沖に近い火山である、浅間山、伊豆諸島の山々、そして富士山はマグマ溜まりに圧力がかかり噴火しやすい状態になっているという。地震と火山の関係では1707年の宝永地震の際、49日後に富士山が噴火している。また世界的にも巨大地震後は必ず近くの火山が噴火しているという。木村氏は2011年8月に出版された「富士山大噴火」(宝島社)の中で、
こう書いている。「本州では少なくも3つの火山が予測される。2011+4年頃に富士山、2012年+4年頃に浅間山、2013年プラス4年(誤差)に御岳山である。」果たして2014年、御岳山は噴火している。富士山噴火の5つの兆候として以下をあげている。
1.
伊豆諸島の噴火と静岡沖地震
富士山周辺の地震活動や火山活動が活発化している。とりわけ伊豆諸島(大島三原山(80年代)、三宅島(2000年)。富士山も同じフィリピン海プレートに乗っており地質学的に兄弟と言っていい。フィリピン海プレートの噴火は南から北に向けて動いて来ている。2009年8月11日、静岡県御前崎沖の駿河湾で静岡沖地震が発生(M6.5)。震源はフィリピン海プレートに押される南海トラフの東端近く。
2.
2000年からの低周波地震の活発化
「富士山噴火のシナリオ検討へ 低周波地震、過去最多 予知連が来月」と2001年1月26日付けの朝日新聞朝刊一面が報じた。低周波地震の震源の近くにはマグマ溜まりがあり、それが徐々に浅くなってきている。
3.富士山東北東斜面からの噴気
2003年9月26日、気象庁が富士山東北東斜面に4カ所の陥没と噴気孔があり噴気があがっていると発表。噴気とは火山から噴出するガスや水蒸気。最近、箱根山でも今まで無かったところに噴気が確認されている。富士宮市では異常な涌水が確認されているが、ある学者によると「水噴火」であり、すでに富士山の噴火は始まっていると考えられるという。
4.
河口湖での発砲現象。
湖底から勢い良く噴出しているガスが確認されたが火山性ガスではなく、天然ガスと判明。しかし、それでもマグマ溜まりの上昇による圧力で湖底に亀裂ができ水中にガスが吹き出したと考えられる。
5.
静岡県東部地震
東日本大震災直後から富士山周辺で通常の地震活動が劇的に増えている。それまでは月10回を超す事はほとんどなかったが、3:11以降、3月に2112回、4月に766回と非常に多くなった。大地震の4日後にはM6.4の大きな地震が富士山マグマ溜まりのすぐ上で起きた。火山研究所員は「あの時、噴火が起きなかったのが不思議なくらいだ。」と語っている。また、つい最近、12月11日、富士五湖を震源としたM4.1、震度3の地震が起きている。さらに地熱の上昇で風穴内の氷柱が解け出している。ちなみに今までM9クラスの地震が世界で5回起きている。そして、そのすべてで例外なく、翌日から3年のスパンで近くの火山が大噴火を起こしている。
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被害予測と対策
1.火山灰被害は東京にも及ぶ
どうやら差し迫った危機は富士山噴火のようだ。もちろん、前後して大地震が起るという複合災害もあり得る。噴火すれば被害が及ぶ地域に70万人が住んでいる。静岡市だけで避難対象が56万人。これだけの人数の避難所問題も浮上する。溶岩流は時速0.4キロくらいで歩いても避難可能だが、火砕流となると時速100キロを超えることもあり車避難でも飲み込まれる恐れがある。もちろん、火砕流の通った後はすべて焼き尽くされ生存者はあり得ない。そして、さらにやっかいなのが火山灰である。東京にも数センチ積もるだろう。そうすると交通、通信が遮断される。火山灰被害は長期化することもあり得る。
2.昼でも暗くなる
前回の噴火(1707年)では火山灰が10日も降り続き、昼でも薄暗かったという。富士山の噴火が差し迫る中、まだ自治体では火山対策が十分なされてないのが心配だ。避難方向がわかるスマホで見られる「降灰予報マップ」を是非、用意していただきたい。
自治体に用意して頂きたいもの
衛星電話、発電機などを設置した避難所などの準備をしておいて欲しい。
各家庭で用意して頂きたいもの
長期室内避難待機が予測されるので、地震同様備蓄が必要になる。
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水や食料
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手回しライト/ラジオ
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緊急トイレ
地震と違ってトイレそのものが壊れることはないが、上下水道が不能になる可能性がある。それで、便器の上にビニールの便袋を被せて使用後、消臭剤と凝固剤をかけて、固めてから普通ゴミとして出せるよう保管する。こういった緊急トイレのセットが30回分−100回分でボックスに入って売っている。アマゾンなどの通信販売でも購入できる。100回分は多いと思われるかも知れないが、仮に一人5回はトイレに行くとして4人家族ならば20回。一週間分ならx7で140回分となる。
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マスク(インフルエンザ用でOK)、
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ゴーグル(メガネの上からかけられる大きめのもの)
通常コンタクトレンズの人は使用できなくなるので、メガネの用意。
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ポリシートなど。
電子機器に細かい火山灰が入り込むとトラブルを起こす。ポリシートなどで、窓の目
ばりをし、電子機器をポリ袋などでカバーしておく必要がある。テレビのリモコンな
どは、ラップすると良い。ただし、コンピュータ—を密閉ラップすると空気孔が塞が
れると発熱する危険があるので注意。
● 火山灰処理用具
東京でも富士山寄りの地域では4センチ〜10センチの降灰が予想される。スコップや雪かきが必要。とくに排水溝に詰まらないように。大雨の時、洪水となる可能性がある。そして、雪と違って重たいので、日本家屋で4センチ以上屋根に積もる場合は灰降ろしが必要となる。しかし、灰はすべりやすいので、大変危険。できれば柄の長い屋根用雪かきを利用したほうが良さそうだ。
重要:これらは平常時に備えておかないと危機状況下では、すぐに売り切れとなる。
それから。町ではコピューターの誤作動によりATM故障など、思わず事故が発生することもある。現金も用意しておいたほうが良さそうだ。しかし、何と言っても心配なのは富士山噴火被害が及ぶ100キロ圏内に浜岡原発があることだ。10日も降り続く火山灰でコンピュータ—の誤作動や電子機器の停止が起らないのだろうか?非常用電源や通信機器にも影響がでるかも知れない。政府の公式見解では、富士山被害の総額は2兆5千億にもなるという。富士山100キロ圏内の農家や工場にも影響が出る。企業の火山対策も立ち後れているようだ。もし、木村教授の2015年説が本当だとすると、すぐに準備に取りかかった方がよさそうだ。
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避難所に宗教施設
首都圏直下型地震では800万人の帰宅難民、2週間後720万人が避難所に押し寄せる。東京ドームの観客収容人数が6万人。いかに大量の被災難民が発生してしまうかおわかりだろう。当然、小学校や中学区だけでは収容しきれず、行政は民間ともタイアップしながら避難所確保に努めているが、そこで今、注目されているのが宗教施設。目下のところ町の避難所マップには神社お寺はあっても教会は載っていない。しかし、都内にも避難所として使えそうな比較的大きな会堂を持つ教会はある。社会貢献できる大きなチャンスではないだろうか?
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一般社団法人 災害支援団体 クラッシュジャパン
次期東京災害対策担当
日本防災士機構公認 防災士
栗原一芳
contact@crashjapan.com