2016年4月30日土曜日

「熊本地震から学ぶ事」

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熊本地震は、2016平成28年)4142126分以降、熊本県及び大分県で連して発生した一連の地震である。まず4142126分頃に、熊本県熊本地方を震源とする、マグニチュード6.5(暫定)の地震が発生し、益城町で最大震度7測された。さらに、その28時間後の416125分頃には、同じく熊本県熊本地方を震源とする、マグニチュード7.3(暫定)の地震が発生し、再び最大震度7測された。気象庁によると、熊本、大分県を中心に続いている地震の発生回数(震度1以上)は、14日夜から28日午前9時までの累計で1001回に上った。震災後2週間たった今も3万6千人が避難生活を続けている。29日時点で危険建物の数は1万2千、これは東日本大震災を上回る。
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まさかここで地震が?!
九州は地震が少ないから大丈夫。そう思っていた人が多かったようです。ある企業では地震の時のバックアップオフィスとして、わざわざ熊本を選んだところもありました。大学環境情報学部准教授の大木聖子さんはこう言っています。「最近、大地震のリスクは、南海トラフの巨大地震や首都直下地震ばかり注目されますが、地震学として考えると、マグニチュード(M)7ぐらいまでは、どこでも起こりえる地震で、その規模の地震があれば周辺では強いれに見舞われるのです。政府は、今回の地震を起こしたと考えられる日奈久(ひなぐ)を含む九州南部の域で、M68以上の地震が30年以に起きる確率は7~18%と推定していました。30年以に70%と推計される南海トラフや南関東の大地震よりもずっと低い確率でした。地震予測研究の限界です。」

 


実は阪神淡路大震災の発生確率は0.02〜8%でした。それでも起こってしまったのです。震災後に人々は「まさか、ここで起こるとは!」と言うのです。図を見ていただければわかる通り、最近の大地震は、政府が危ないと指定しているところ以外で起こっています。もちろん、南海トラフや首都直下は高い確率で起こるでしょうが、だからといって、他の地域が安全という訳ではありません。

日本には2000の活断層があり(未知のものを含めると6000本と言われています。)、そのうち110本が評価済みということです。海洋型地震の場合は比較的周期通り起こるので予測しやすいのですが、内陸断層型地震は今までの例から分かるように、いきなり起きてしまうのです。断層型に限っては発生確率はあって無いようなものでしょう。関東にも図のように多くの活断層が確認されています。



前回の阪神淡路同様に、今回の熊本災害も1981年以前の旧建築法で建てられた建物に甚大な被害が出ました。建物の耐震化は基本的な対策の1つです。しかし、分かってはいても耐震化はお金もかかりますので、つい後手後手になってしまいがちです。部分的に耐震化するとうのも1つの手です。最近は耐震ベッドや、寝室がすっぽり入る耐震シェルターなども開発、販売されています。


震度7が来たら家が潰れて家具の固定など役に立たないと言って、やらない人もいるようです。しかし、震度5−6も起こります。すると家は倒れなくても家具や食器棚が倒れると逃げ道が塞がれる可能性がありますので、やはり家具の固定は必要でしょう。

いずれにしても日本では被災地以外は「未被地」です。どこでも震災は起こりえます。正しい危機感を持って備えることが大切です。


物資が行きわたらない!
漏れの無い支援が目標ですが、どうしても物資の足りている避難所と足り無い避難所という差が出てしまいます。それでもインターネット、SNSの普及で、だいぶコミュニケーションは取りやすくなってきているのだと思います。Yahooの支援マップ(http://kumamotojishin.yahoo.co.jp/)には給水地、避難所のローケーション、名称・住所などがすぐ分かるようになっています。大きな進歩ですね。



家が倒壊、半倒壊すると住めなくなりますので、避難所に避難します。知り合いが被災地にいるとなるとすぐに物を届けに行きたいのは人情でしょう。また、様々な民間のNPOなどの支援団体も動き始めます。しかし、道が渋滞して、自衛隊などの大量物資を運ぶ車の妨げになってしまうこともあります。また、自衛隊、消防隊は瓦礫に埋まっている人の人命救助が優先になりますが、その妨げになってしまう可能性もあります。

私が東日本大震災後、災害支援団体クラッシュ・ジャパンの倉庫で物資の仕分けをしている時、使い古しのものや、おそらく使わないだろうと思われる海外からの歯磨き粉やXXLサイズの服などを見つけました。現地で必要なもの、使うもの、使えるものを送ることが原則です。そして、現地でのニーズは刻々と変化します。3:11の時、初め被災地は寒く、毛布などの必要が訴えられましたが、すぐに春、夏と気候が変わっていきました。倉庫には冬物の衣類や毛布が溜まってゆきました。過去から学んで、賢い支援をすることが必要です。変化するニーズに対応するため、「支援金」を集めて、送るというのも大事な支援になります。ボランティアに駆けつけることもいいですが、現地に行かなくてもできることは沢山あります。

また、今回も物資の仕分けや避難所に配達する職員が不足だったり、経験不足だったりで混乱があったようです。明治大学危機管理研究センターの市川宏雄所長(都市計画)は、民間企業は危機管理のノウハウが蓄積されているために行動が早かったとみています。自治体も被災経験のある自治体とノウハウを共有して備えることが重要だが、熊本では実行できていたか疑問符がつくと話しています。次期の首都圏直下では、政府は自治体が要請する前に必要と思われるものを送る「プッシュ支援」を計画しています。



それはありがたいのですが、各自治体に送りつけられ高く積み上げられた物資を誰が仕分けし、誰がそれぞれの避難所まで運び、また、避難所でどう公平に配布するのかが課題となります。震災が起こると大手企業が物資を支援するケースが多々あります。役所はその対応だけで一杯で、個人やNPOからの物資の問い合わせに対応している余裕がないというのが実態のようです。今回の被災直後の状況をニュースは次のように伝えています。

「熊本産業展示場(グランメッセ)はイベントや会議を開く施設で、県が所有し、民間が運。避難者がえたのを受け、町職員が5人態勢対応しているが、避難者名簿もなく、人は車の台からの推定だ。多くは町外の住民とみられる。17日の発表では1万人だった。

以前、書きましたが、私の住んでいる東久留米市は人口11万人ですが、防災課の職員は2名しかいません。そこで、社会福祉協議会はボランティアセンターで奉仕できる「災害市民ボランティア」を前もって養成する講座を開いています。講座を受けた人は震災時ボランティアセンターで働くワーカーとして登録されます。そのように市民ボランティアの助けが必要となることが分かっているので前もって養成しておきます。また、避難所も基本的には避難所に入る人が運営することになるので、前もって「避難所運営委員会」を立ち上げ、物資の受け取り、配布についても協議しておくことが必要ですね。実は避難所には探してみると大工さん、看護師、介護士、美容師、調理師、警備員、元会社管理職など意外と人材が豊富なのです。避難所の名簿にできることを書いてもらうのも一案です。被災地では皆が被災者です。お互い助け合い、人材リソースを活用しましょう。


生活しにくい避難所
今回の地震では避難者が想定の7200人を超え、指定外の施設にる形になりました。入りきれない人や建物の崩壊を恐れる人々は駐車場で車中泊を強いられた訳です。これは首都圏ではシリアスな問題となります。1都(東京都)3県(埼玉、千葉、神奈川)で、800万人の帰宅難民、2週間後には720万の避難民が想定されているのです。当然指定避難所だけでは足りなくなるでしょう。大型商業施設や民間の施設の協力が不可欠になります。

もちろん、避難所は緊急の場所なので、快適にという訳にはいかないでしょうが、すでに過去の災害から避難所の問題はいろいろ指摘されてきています。どれほど向上できたのでしょうか? 避難所の典型的な問題は・・・

 汚い
 眠れない
 プライバシーが無く、女性が着替える場所がない。
 仮設トイレが遠くて暗い。和式しかなく高齢者が使えない。数も十分でない。
  トイレを我慢し水を飲まないので病気になる。
 スマホ、携帯電話の充電ができない。などなど

これらの問題が起きることは分かりきっています。是非とも事前に避難所運営委員会を立ち上げ、以下のことを話し合っておきたいものです。

 指定避難所は耐震的に大丈夫か? 液状化などの危険性はないか?
⚪ 人が入る前にテープで区切りをして通路を作る。通路がないと、移動がし
  にくいだけでなく、人の頭を踏んでしまうので、夜中にトイレにも行けな
  い。
  学校の場合、工作室や理科室などあるので、どこを立ち入り禁止にするか。
  本部をどこにおくか? 掲示板をどこにおくか? 集会室、サロン?
  コミュニケーションの「場」が大事になります。
  要援護者(高齢者、障害者、幼児を連れたお母さん、外国人をどこに配置す
  るか。ペットを連れた人をどうするか?
  避難所運営に女性の視点を入れる。
  仮設トイレをどこに配置するか。いくつ必要か? どこから調達するのか?
  物資をどこで受け取り、どこに保管するか? などです。



福島県いわき市立湯本第二中学校の元校長、澤井史郎氏は、自らの避難所を「日本一の避難所にしよう!」との高い意識で取り組みました。そして、少しでも快適な避難所を目指しました。皆で話し合って、テレビを置いたサロン、集会室、子供の勉強部屋、焼香の場などを設置しました。また避難所は多様性が凝縮された集団という認識で、「避難所に国境なし」を掲げました。「一人一役」を原則とし、子供であっても仕事をするような組織作りを行いました。

民間の災害支援NPOなどと繋がっておくことも有益でしょう。また、今回、熊本ではエコノミークラス症候群で人が亡くなっています。衛生面、健康面での指導ができる人も早く配置する必要があります。子供達のトラウマケアも必要です。マスコミが取り上げている間、物資や支援が届くでしょうが、精神的なトラウマは長期的なケアが必要になります。思い出の詰まった自分の家を失った、家族を失った。これはものすごい喪失感です。これから仮設住宅での生活が始まります。最初の救援段階が終わってからの長期的な被災者ケアをどうしてゆくかが課題になります。

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一般社団法人 災害支援団体 クラッシュ・ジャパン
次期東京災害対策担当
日本防災士機構公認 防災士

栗原一芳 (くりはら かずよし)
contact@crashjapan.com