2016年9月22日木曜日

災害支援センター立ち上げ

今後も起こる大地震

9月11日のNHKスペシャル「メガクライシス」で今後の大地震の予測について報道されていた。東北大の遠田氏によると、今後、可能性が大きいところが


1)糸魚川静岡構造線上の松本。
2)仙台市周辺とのこと。

京大の山下氏によると、熊本地震後、日向灘で低周波振動が確認されている。海底観測網DONETにより日向灘ではスロースリップも観測されており、3:11前、宮城県沖でスロースリップが観測されていたことから巨大地震の前触れである可能性があるという。また日向灘の地震が南海トラフ巨大地震の引き金になる可能性もある。2020年には東京オリンピックが開催されるが、首都圏直下型地震の発生確率、今後30年で70%という数字は取り下げられてはいない。いずれにしても災害危機迫る中、避難生活は他人事ではない。また、災害支援センターについても知っておくと助けになる。




 避難所生活者、必要の変化

時系列的には、まずは自分の身を守る(自助)、隣近所で助け合う(共助)そして、外部からの公式援助(公助)の順になる。そして、災害直後の被災者のニーズもまずは、身の「安全」、「安心」。具体的には安全な場所、水、食料、排泄、睡眠などとなる。「心のケア」はこの第一段階が満たされてからとなる。被災者の必要品も時間とともに変化していく。

避難生活初日
食糧飲み水絶対量が足りない。家族で分けあう。 衣類、日用生活品が足りない。子どものオムツが必要。  3日目くらいで解決。救援物資が届くようになる。

救援活動第1段階 発生直後
避難、安否確認等の時点 等により組織活動が困難な時期。近隣住民同士の協力により安全な場所への避難、安否確認。 避難生活

2~3日目 食糧が足りない。温かい汁物がほしい。子どものオムツが足りない。診察してほしい。生活用水が足りない。知り合いの安否を知りたい。  おにぎり程度の食糧の提供。

救援活動第2段階 発生~3日目
支援活動の開始 災害ボランティアセンターの設置により組織活動が徐々に可能になる時期 避難所の対応、安否確認、ニーズ調が中心。

避難生活 3日目~一週間 個別援助のニーズが高まってくる 温かい汁物がほしい。野菜、果物がほしい。洗濯したい。お風呂に入りた い。半の自宅から必要なものを引き出してほしい。別の場所に移りたい。
亡くなった人を供養したい。介護を手伝ってほしい。通院したい。買い物に出たい。役所の手きがしたい。
 在宅の高齢者家庭などへの救物資の配給が見落とされがちである。
 電が使えるようになる。テレビからの情報が入ってくる。

救援活動第3段階 発生~一週間
被災者のニーズが個別的なものへ化する時期。 ニーズを把握し、コーディネート力を発揮する時期。 がれきの撤去や、後片付け、物の搬送が中心。
支援活動コーディネートがピークに達する時点。

避難生活~2カ月 仮設住宅などへ引っ越したい。集会場所がほしい。分転換がしたい。プ ライバシーを守りたい。家を修理したい。

救援活動第4段階 発生~2カ月
面の生活維持の時点避難所、仮設住宅へ入所している方や、高齢者や障害者への支援が中心。 災害ボランティアセンターを通常体制に切り替える時点 地元住民の継続的な活動となる時期。
被災者が自立に向けて生活を立て直す時期。
                     (秋田県社会福祉協議会 作成資料より)


災害支援センター開設に向けて
考えるべきこと                 

1. いつ、どういう況でセンターを開設するか? 

  防災課職員、支援NPOの職員も被災している可能性がある。まずは、自助。自分が助
  かる。家族の安否。近隣の安否。それから社協やNPO職員が支援センター開設に向い
  動き出す。初日は混乱状態で、早くても支援センター立ち上げは2日後となる。

  まずは、情報集、先発隊による視察、その情報を元に、センター開設を決
  ることになる訳だが、誰がどういう状態の時、開設の決断をするか決めておく
  ボランティア募集をかける際は、二次災害の危性も踏まえ、安全管理者が安全を確
  認してから一般のボランティアを募る。(得に放射能問題がある場合)

2. どこにセンターを開設するか? 

  ハザードマップなどを参考に、災害予想は地元レベルで具体的に考える。
  各災害シュミレーションにより、幾つかのパターンが考えられる。

  1) そのエリアが全滅の場合。被災地外に開設する。(首都直下型地震など)
  2) 部分被災はあっても、被災地外の本部と連携して、現地ベースとして機能できる
     場合。(先の熊本地震における九州キリスト災害支援センターの場合、本部を
     福岡に置き、現地ベースを熊本内の教会に置いた。)
  3)地元エリアに災害本部を立ち上げるケース。(浸水など局所災害時)



     
3.どの施設をセンターとして使うか?

  1)意思決定チーム実務チームが作業できるだけのスペースがあるか
     意思決定チームが電話対応に忙殺されないように、実務チームを分けておく。
  2)物資の置き場」(及び駐車場スペース)ボランティア宿泊のスペースが
     あるか?または、これらは必ずしも本部オフィスと同じ建物である必要はない
     ので、近隣に使える施設を探すことも可能。
  3)電話回線の使用が可能か。(被災者用、ボランティア用、情報提供用インタ
    ーネット、スタッフ間、センター間の連絡用)それに聴覚障害者用FAXなども。
    被害況の事実などはホームページに載し、いちいち電話応対しなくていいよ
    うにする。被災地にあるセンターは外部からの問い合わせで忙殺される可能性が
    ある。被災者からの連絡用と外部問い合わせ(マスコミ、ボランティア)からの
    電話番号を分けることが賢いやり方だ。

4.センターにどういう部門が必要か? 

  ある社協のボランティアセンターのケースでは
  1)被災地ニーズ受付部門     2)ボランティア受付部門
  3)マッチング部門        4)送り出し部門

  これはシンプルで分かりやすい。ただし、社協など、すでにある程度の組織や人材が
  ある場合は周りにサポートがあるので、このようなシンプルなスタイルでいいかも知
  れないが、ゼロからの立ち上げ、あるいは独立した規模の大きなセンターとなるとも
  う少し複雑になる。

  私の属する一般社団法人クラッシュジャパンの東日本大震災時の組織は以下のようで
  ある。私たちは国際基準である災害時指令システム(Incidental Command
     System=ICS)を採用した。



     

                      (ケビン・エラーズ著)


  まず、災害時対応指令責任者(コマンダー)の元にコマンドチーム(意思決定機関)
  が作られる。コマンドスタッフは以下の4つの役割部門のヘッドの集まりとなる。

  1) 広報ファンドレイズ (祈り、経済的支援のための情報発信)
    クラッシュの場合はウエッブ、フェイスブック、Youtubeを駆使してバイリンガル
    で世界に向けて情報発信し、また独自のビデオニュースを作製し放映した。
  2)安全管理者 safety officer (放射能問題も含む)
  3)リエゾン (地域、地域外の牧師、支援体、社協などとの連絡、調整役)
  4)チャプレン心のケア (支援センタースタッフやボランティアのケア)

その下に実務スタッフが配置された。

  1) オペレーション (リーダーと現場の間を指揮る)
  2) ロジスティックス (物資、倉庫、車の手配、海外からの物資の通関など)
  3) ボランティア・コーディネーション(募集、スクリーニング、現地ニーズ把握)
  4) 会計 (献金の管理、雇用者への給与支いなど)
  5) プランニング (長期的なプラン、救援段階、支援段階、復興段階、計画と予算)
  6) HR人事 (センターで雇うスタッフの面接、給料体系、人事管理) 
  7) 受付 (通常業務が中されないため外者や電話対応、一般電話答する)

  クラッシュの場合、このような「災害支援本部」が東京に置かれ、東北被災地5箇所に
  現地ベースが設置された。現地ベースは被災地から少し離れたところのキャンプ場などを
  活用した。こうすることで被災地の教会や施設に直接負担を負わせることなく援助活動を
  展開できる。またボランティにとっても被災地での活動は精神的にきついものがあるので、
  被災地から離れた宿泊場で、心身ともに休息できる。現地ベースでは専属のスタッフが
  配置され、ボランティアの歓迎、オリエンテーション、被災地への送り迎え、最後のディ
  ブリーフ等を行った。本部オフィスと定期的にコミュニケーション(スカイプ会議など)
  をして変化する現地のニーズを知らせるようにする。


5.コミュニケーション!コミュニケーション!
 
     現場と本部はどうしてもギャップが生まれやすい。コミュニケーションを定期的に取
  り、本部職員が現地ベースを折々訪問することも必要となる。意思決定会議(コマン
  ドチーム)や各部門責任者連絡会、スタッフ全体会、などでスタッフがを会わせて
  意思疎通をることが重要である。誰がどこまで決定できるのかも明確にする。  
  (例えば幾らまでは各部署の判断で使えるなど)また団体内だけではなく、同じ被災
  地で働いている他のNPO,社協、海外援助団体などとも効果的な連携のためコミュニケ
  ーションが必要となる。だいたいの被災地では連携ネットワークのための会議が持た
  れる。自治体、自衛隊、社協、商工会議所、そしてNPO支援団体との連携が取れるこ
  とが望ましい。

6.長期的なケアプラン 況、被災者のニーズが刻々化する。物資から心のケアへ

  教会の場合だと、会堂修理、礼協力、教支援、さらには疲弊した牧師のための
  リトリートなどが為されていく。支援する側も燃え尽きないようにケアが必要。米国
  では救世軍が中心となり、被災地で活動する消防士や警察官の心のケアが為されて
  いる。

  被災者は災害直後にはハイテンションである種の高揚感を経験するが、やがてマス
  コミや、ボランティアが去り、事態が落ち着いて現実が見えてくる頃、絶望感が
  襲っている。3年目くらいから、「心のケア」の必要が増大する。孤独死も増えて
  行く中、継続的仮設訪問などが必要になる。東日本では仮設から復興住宅に移り、
  孤立化が進み、さらにこの必要が増している。

                                
「受援力」という言葉がある。外部からの援助をより的確に効果的に受けていく力。そのために平常時から災害支援(支援する側、支援される側、両面含む)に関して認識、知識を深めておくことが望ましい。

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一般社団法人 災害支援団体 クラッシュ・ジャパン
次期東京災害対策担当
日本防災士機構公認 防災士

栗原一芳 (くりはら かずよし)
contact@crashjapan.com