2013年7月24日水曜日

災害ボランティア(1)





1995年はボランティア元年

1995年の阪神淡路大震災の時、140万人の被災者に対し、約30万人のボランティアが駆けつけてくれたという。行政が対応できない部分、大活躍してくれた。それで1995年は「ボランティア元年」と呼ばれ、以来、災害時にはボランティアの存在はかかせないものとなった。また同時に、それはレッスンを学ぶ機会でもあった。被災者のニーズとボランティアをつなぐコーディネーター機能が不在であったため多くの混乱もあった。「何かを手伝いたい」というボランティアと「何かを手伝ってもらいたい」という被災者をつなぐ機能が必要であり、「災害ボランティアセンター」というしくみが作られるようになった。



災害対応サイクルによるボランティア活動


1)事前の備え(予防ボランティア、ないし防災ボランティア)

被災地でのボランティア活動の体験や経験や学びを生かし、災害時の初動体制づくり(連携)をスムーズにするため、平常時から様々な主体(地域住民、行政機関、ボランティアなど)を事前にネットワークする。また、防災セミナーなどを行い、住民の災害に対する意識啓発活動を行う。「顔の見える防災コミュニティの創出」が目的となる。住宅の耐震化や家具の転倒防止活動なども行う。災害時の要援助者(高齢者、障害者)を認識しておくことも大事である。この働きは必要かつ重要だが、まだまだ認知されていないボランティア活動である。

2)応急対応(救援ボランティア)

一般の人がイメージする「避難所で被災者の世話をする」、あるいは、「壊れた家の瓦礫を片付ける」などの災害ボランティア像が、この期のボランティア活動。ライフラインの破壊に伴う生活支援への対応、避難所での集団生活の運営支援が主な活動。


3)復旧・復興(復興ボランティア)

仮設住宅での高齢者の見守り、心のケアや町づくり、産業再生などでの支援活動。被災者や被災地が自らの生活環境を再構築してゆくなどの側面支援をする。復興、町づくりには専門家によるアドバイスという支援も必要になる。被災者や地域コミュニティ、行政機関、専門家をつなぐ働きも含まれる。被災者にとっては心配してくれる人がいるという「ボランティアの存在」に救われるという場合も多い。「寄り添う」がキーワード。



ちなみに、震災1年半後、私どもの支援団体クラッシュジャパンに日経新聞が取材に来た。日本人でも被災地のことを忘れかけているのに、また、円高の中、どうしてまだ海外からボランティアが来続けているのか知りたいということだった。一緒にいた職員(宣教師)は「神の愛でしょうね」と答えていた。

(つづく)











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一般社団法人 災害支援団体クラッシュジャパン 東京次期災害対策担当
日本防災士機構認定 防災士      栗原一芳(くりはら かずよし)

crashkazu@gmail.com

2013年7月10日水曜日

災害医療と心のケア



 「いかにして救うことのできる命をすくうか」これが災害時の緊急課題です。

阪神淡路大震災では死亡者が6434人、直接死5500人のうちおよそ9割が家の倒壊、家具による窒息死や圧死で被災直後(5分くらいの間)に亡くなっています。しかし、残りの1割については救命の可能性があったといわれています。問題は同時多発的に負傷者や死者が出るので対応しきれなくなるということです。阪神淡路では要救援者の約8割は近隣住民によって救出されています。地域住民レベルで資機材の取り扱いや、基本的な救援、救護法を学び、一人でも多く、一刻も早く助け出すための備えをする必要があるのです。ちなみに「救助活動の3種の神器」はバール、のこぎり、ジャッキだそうです。地域レベルで備えておくといいでしょう。

それから、なるべく多くの方が地元消防署で行っている救命技能訓練を受けて、AEDの使い方や、心肺蘇生法を生んでおくようにしたいものです。日本では年間、10万人くらいの人が突然死で亡くなります。突然心停止の主な原因は、心筋がけいれんを起こして血液を送り出すことができなくなってしまう、心室細動です。心停止後約3分で、死亡率は50%に達すると言われていますが、119番からの通報で救急車が現場に到着するまでに平均6分かかります。その時、救命処置をするかしないかで生存に大きく影響します。正常な呼吸が無い場合は両手で負傷者の胸の中央を5cmくらい沈ませる感じで1分間100回のテンポで繰り返し強く押します。しかし、救急車を呼ぶことが先決です。

救助活動をする場合には、余震による建物の崩壊や救出活動中の崩壊など、二次災害に注意してください。救出作業は複数でして、作業時には活動全体を監視する人を数名置き、状況の安全確認をするようにしてください。救出は「人命の危険が切迫している人」「救出作業が容易な人」を優先してください。


トリアージとは何か?
「負傷度による負傷者の選別」を意味します。一時に多数発生した負傷者を救命するために、到着した順番ではなく、「緊急度」と「重症度」による治療優先度を数十秒から数分で決定します。これは、死者や、救命不可能な超重傷者に治療の優先権を与えないということも意味します。また、必ずしも、子ども、女性、高齢者、障害者であるという特性に基づいて治療の優先が決定されるのではないことも意味します。トリアージされた人には手首、または足首にトリアージタッグが付けられます。治療の優先順位別に色分けされています。
     
     赤:緊急
     黄:非緊急
     緑:軽処置
     黒:死亡、不処置

被災地の防災拠点(小学校等)ではトリアージするスペースを確保しておくことも重要です。トリアージされた後、負傷者の搬送(トランスポーテーション)、そして治療(トリートメント)となります。


クラッシュシンドロームとは?
四肢が長時間挟まれると、筋肉に血液が供給されなくなり、完全に血流が遮断されると、筋肉は4−6時間で不可逆性の壊死に陥り、筋肉細胞が破壊され、多量のカリウムが出されます。この状態で圧迫が解除されると、カリウムを大量に含んだ血液が全身を巡り、最も重症の場合は、心臓の拍動が止まってしまうのです。長時間下敷きになり、四肢の圧迫を受けて数時間経過した人については、圧迫を除く前に止血帯で圧迫し、血流を再開させないように処置しなければなりません。救急隊や医師が到着する前に行える事は、カリウムを含まない水を与える事、保湿・加温することや元気づけることであり、未処置の状態で容易に四肢の圧迫を除いてはならないのです。


PTSDとは何か?
心的外傷後ストレス障害と訳される。災害や事故などで生命の危機を体験したり、財産や家族を失うなどの心的外傷(トラウマ)を受けた人たちが、その後の日常生活において、その時の状況や体験を繰り返し想起しては苦しむ状態です。災害時には誰でもストレスを受けます。短期のボランティア活動でもストレスを受けますが、それは正常なことです。災害時の正常なストレス反応を「急性ストレス障害(ASD)」と言います。ASD PTSDの区別は少なくも一ヶ月経過しないと分かりません。急性ストレス障害のケアは心理療法士が対応できますが、PTSD は、熟練した高度な専門知識を持つ精神科医が担当すべき病態です。災害時には職業的救援者(自衛隊、消防隊員、警察官など)も遺体や悲惨な光景を目撃し、またトリアージなど重要な判断に際し、大きなストレスを受けます。被災者と接することでストレスを共有、自らの家族の安否もわからないまま災害現場を体験するなど、PTSDが起りやすく、「隠れた被災者」と呼ばれていることも理解しておきましょう。職業的救援者へのケアも必要なのです。9:11貿易センタービルの惨事の対応にあたった職業的救援者のケアのため唯一政府公認で制限区域に入って奉仕したのは救世軍でした。避難所運営の市民ボランティアも同じ被災者です。彼らも不快な環境で長時間奉仕し、避難所入居者同士のトラブルや苦情でストレスが蓄積されていきます。誰もお客さんはいません。皆がお互いを支えてゆく姿勢が必要とされます。

避難所での死(災害関連死)も多数起ります。悲しい事ですが、せっかく災害からは生き延びたのに、ストレスの多い避難所で亡くなってしまうのです。特に持病が悪化してしまうケースが多いのです。高齢者をトイレ近くに配置するなど、少しでもストレスが少なくなるよう前もって計画したいものです。避難所では生きる気力が無くなり、生活不活発病になる高齢者も多く出てきます。側に寄り添うボランティアの存在も大きな助けです。東北の震災では車での寝泊まりでエコノミー症候群になった人達もいました。

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依頼に応じて随時、防災セミナーを行っております。(都内のみ)セミナーに関しては、メール crashkazu@gmail.com(栗原)まで、あるいは、クラッシュジャパン事務局(050−1213−1388)までお問い合わせ下さい。


日本防災士機構認定防災士
災害支援団体クラッシュジャパン(一般社団法人)次期東京災害対策担当
栗原一芳(くりはら かずよし)