2013年8月20日火曜日

自然災害警報



気象庁は気象によって「重大な災害が起るおそれのあるとき」には「警報」を、「災害が起るおそれのあるとき」には「注意報」を発表する。


地震警報
震度速報の第一報は地震発生後約1分半後までに発表される。地震は同じ場所で繰り返し起る。地震が発生すると先ず、縦揺れのP(Primary)が秒速約7キロで発生、それに続きS波(Secondary)が秒速4キロで発生。P波を捉えて緊急地震速報が流される。これによって震源地からの距離にもよるが、数秒の余裕ができる。年々精度は高くなっているとはいえ、まだ100%ではない。警報を聞いたら先ず、上を見る。落ちて来る者が無いか?そして頭をカバンなどで保護する。次に下を見て躓くものがないかチェックしておく。そして、逃げ道を探すため周りを見る。ただし、5強以上だと歩くのが困難になるので、やたらと移動しない方がいい。

大地震時には火災が起る。一般に家が倒壊すると火災が起る。あるいは津波が火災を起こすこともある。大地震後は消火活動が極めて困難になる。理由は

1)同時多発火災に消防署も対処できない。
2)地震が家が倒れて道をふさぎ、消防自動車が通れない。
3)地下の貯水槽が揺れによりダメージを負い、放水をはじめたものの、すぐ水が止まってしまった。また水道管が折損して、水が地中に漏れ出した。
4)ビルが焼け止まりになると思いきや、窓ガラスが割れ落ち、火が建物の中を通り抜けて反対側に出て延焼した。
5)地震で一旦、停電し、再び電力が復旧したときに、地震時に使用していた電熱器具に電気が通って出火する通電火災が多く起った。
6)道路が液状化し、時に砂まじりの水を地表へ吹き出す噴砂現象が起り通行を困難にする。
7)木造密集地帯では同時多発的に火災が起り、火災旋風となり消防活動を困難にする。

延焼からの避難所(広域避難所)を確認しておく必要がある。耐震化をして家が倒壊しないようにすることは消火活動、援助活動を妨げないためにも重要である。日本では2011年の6月からすべての住居に住宅用火災警報機の設置が義務づけられている。住宅火災では逃げ遅れによる死者が約70%を占め、死者数の約半分は高齢者であることから、対策が求められる。特に独居老人が増加するなか、ふだんからのコミュニケーションが大切。また、インテリア、寝具、衣料などの防炎化を図ることも重要。


津波予報
震源が海底にあり、津波を引き起こす可能性のある大地震が発生した場合には、地震が発生してから約3分後を目標に津波警報、または津波注意報を発表。全国66の予報区ごとに、沿岸での津波の高さ、到達時刻を予測し、津波情報として発表される。津波は何度も来る。津波は湾奥で高くなる。津波は川や運河を遡上する。(東京湾と違って地形上大阪湾では津波の被害が大きくなる。南海トラフでは5mが予測されており、川を逆流してJR大阪駅まで浸水するとされている。最近の予測では大阪駅周辺で、最悪5mの浸水。梅田地下街は「日本最大の迷路」と言われており浸水の被害が大きくなる事が予想される。津波は20cmでも立ってられず、1mで死亡率100%と言われている。とにかく上へ、できるだけ高いところ(鉄筋コンクリート造建物の5階以上)へ避難。防潮堤などの整備は不可欠だが、大地震時には液状化で防潮堤が沈むことも考慮に入れる必要がある。(名古屋湾の防潮堤は液状化で最大2.9m沈下する試算が出ている)南海トラフ地震で、名古屋でも最大5mの津波が予測されており、もし防潮堤が沈むと、津波は湾岸に進入する可能性が大きい。名古屋は日本一のゼロメートル地帯が広がっており、被害が甚大となる。


火山警戒情報
警戒レベルや危険範囲に応じて「避難」「避難準備」「入山規制」「火口周辺規制」「平常」の5段階で警戒を呼びかける。2012年4月現在、29火山において、噴火警戒レベルを導入。火砕流は内部温度が数百度C,流下速度時速
100Kmを超えることもある。すべてのものは焼き払われ生存者はあり得ない。2000年の有珠山噴火は日本で初めて噴火予知に成功した事例である。各自治体がすでに作成、公表してあった火山防災マップに基づいて危険区の住民に対して避難を指示し、住民も迅速に行動し、一人の死傷者も出さずに済んだ。ちなみに2000年の三宅島の噴火では全島民避難という事態になり4年5ヶ月ぶりに帰島が許された。地震は数秒だが、火山活動は数年に及ぶこともありうることを覚えておくべきだ。噴火後の推移を見守ることが減災につながる。



水害豪雨情報
国土の10%の洪水氾濫区域に、総人口の約50%が居住し、全資産の約75%がこの区域に集中している。日本は世界でも4番目に降雨量の多い国であり、土砂災害危険箇所が全国52万カ所もある。最近は大気が不安定になりゲリラ豪雨があちこちに発生し観測史上記録を更新している。豪雨に関して「これまでに経験ないような大雨」という警告も使用している。川の氾濫だけでなく、排水の問題による洪水(内水氾濫)が都心部では起こりうる。舗装された道では水の逃げ場が無くなるからだ。山岳地では大規模な斜面崩壊(深層崩壊)が発生している。気象庁の降水ナウキャストでは目先、1時間から6時間の雨量分析を1km四方の細かさで予測。Yahooの災害サイトで登録すると登録地域の豪雨の情報(何時頃どのくらいの量の雨が降るか)がリアルタイムで携帯に送られてくるシステムもある。



大雪情報
2010−11年の年末年始の大雪被害では鳥取県と島根県のツイッター利用者が雪の情報を共有するためにタグを設定、行政側もこのタグを付けて交通情報を流し、様々な情報を投稿し合って助け合った。このようなリアルタイムの情報交換手段は有益である。

Jアラート
Jアラートとは、地震、津波や武力攻撃などの緊急情報を、国から市区町村へ、人口衛星などを通じて瞬時に伝えるシステムです。全国的にさまざまな手段で情報伝達訓練が実施されます。例えば東久留米市では9月11日(水)に防災行政無線を用いた「緊急情報の伝達訓練」が実施されます。これは市内に設置してある防災行政無線から試験放送を一斉に行うものです。
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災害支援団体クラッシュジャパン次期東京災害対策担当
日本防災士機構認定 防災士
栗原 一芳
crashkazu@gmail.com

2013年8月6日火曜日

災害ボランティア(2)





被災者の心理状態
被災者の心理状態は一般的に次の4段階を通ると言われている。

1段階: 英雄期 (災害直後)
 自分や家族・近隣の人々の命や財産を守るために、危険を顧みずに勇気ある行動をとる時期である。

2段階:ハネムーン期(1週間~6ヶ月間)
 劇的な災害を共にくぐり抜けてきたことで、被災者同士の間に強い連帯感が生じる。外からの援助やサポートに希望を託しながら、皆で瓦礫や残骸の片付け等、互いに助け合う。この時期は被 災地全体を暖かいムードが覆うが、これは世間の注目が減少すると、次第に否定的な感情へと移り変わる可能性がある。

3段階:幻滅期(2ヶ月~12年間)
 被災者の忍耐が限界に達し、援助の遅れや行政の失策への不満が噴出する。やり場のない怒りに駆られたり、喧嘩などのトラブルも起こりやすい時期である。被災者の間で様々な依存症や心理的病状が現れ、自殺の危険性が高まる。被災者は個人個人の生活の再建や自分の問題の解決に追われるため、第二段階で味わった 地域の連帯感や共感が失われていく

4段階:再建期(数年間)
 被災地が「日常」の状態に戻るに連れ、被災者も生活を建て直すために勇気を持つ段階。地域の再建に積極的に参加することで、自信も回復してくる。ただし、心の支えを失ったり、復興から取り残された人にとっては、ストレスの多い生活が続く。


被災者側からは、状況を改善してくれる「機能」よりも、心配してくれる人がいるのだという「寄り添う存在」に救われる場合も多い。「忘れ去られる」ということが一番辛いのではないだろうか。福島の放射能汚染問題は現在進行形である。東日本大震災での「心のケア」はまだまだ必要とされている。





今後期待されるボランティア

1.ボランティアコーディネーター
被災者、被災地の回復具合を見ながら、どこにどのくらいの必要があるかを判断し、外部からのボランティアをしたい人を配分してゆく役割。この役割を負うのがボランティアセンターであり、これなしには、混乱と無駄が出てしまう。災害が起ったらまず、立ち上げなければならないのが、このボランティアセンターであり、ボランティアコーディネータ-の配置である。

2.被災状況情報ボランティア
東日本大震災においては物資の配給にムラがあり、ほとんど届かない避難所もあったと聞く。被災地状況の現状を早く掴む情報システムやツールが必要とされる。クラッシュジャパンでは米国ホイートン大学人道災害研究所との協力によりタブレットやスマホで使える被災地情報把握ソフトを開発中である。実際に運営するには現地で情報をインプットしてくれるボランティアが必要となる。

3.防災ボランティア
国連の試算では、防災のための1ドルの投資は災害時の対応の7ドルに匹敵するという。自然災害自体は防げないが、減災はできる。ハードの面での耐震化、家具の固定。ソフトの面での防災意識の向上、「助け合い」のコミュニティ作り、要援護者の救助体制作り、自治会、行政、NPOなどのネットワーク作りなどが必要とされている。それらを助ける、防災ボランティアの存在が期待されている。防災の「意識」「知識」「技術」を持った民間防災士を育成するため、日本防災士機構が主催する防災士養成講座がある。http://www.bousaishi.net/

3.多様なボランティア
まず、ハザードの違いによりボランティアの形態が変わるということ。水害時には人海戦術で短期間型のボランティア活動がなされるが、大地震時には、被災地が広範なこと、被災者のニーズが多様なことから、それらのニーズに個別に対応する長期間型のボランティアが必要とされる。また、地域性(脆弱性)による違いもある。山間部では過疎、高齢化、孤立化の問題がある。都会では住宅密集や、高齢化に加えて高層階難民の問題がある。停電でエレベーターが止まれば、高層ビルの上階の人々は孤立化する。さらに高齢化が拍車をかける。非常階段はあっても地震の揺れでダメージを受けている可能性があるし、たとえダメージがなくても10階以上を高齢者が水や物資を持って階段を上り下りすることは不可能と言っていい。そこで、階段を上り下りして水や物資を届ける若者による「運び屋」ボランティアが大いに役に立つことになる。


いずれにしても災害時に行政ができることには限界があり、隙間を埋めるボランティアの存在は被災地に無くてはならない存在となっている。

しかし、同時にボランティアが被災地の邪魔になってはならない。宿泊や食事の準備のないまま現地にいってもお世話をかけるだけになってしまう。また、被災者への接し方など、ある程度の訓練も必要。また被災地の現状、被災者の話を聞く事でボランティア自身心理的傷を負うことが予期されるので、きちんとしたディーブリーフ(被災地から出る時のオリエンテーション)も必要となる。以上のことから、宿泊ベースを持つ専門的な災害支援団体を通して行くことをお薦めします。

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災害支援団体クラッシュジャパン 次期東京災害対策担当
日本防災士機構認定防災士
栗原 一芳
crashkazu@gmail.com