2013年8月6日火曜日

災害ボランティア(2)





被災者の心理状態
被災者の心理状態は一般的に次の4段階を通ると言われている。

1段階: 英雄期 (災害直後)
 自分や家族・近隣の人々の命や財産を守るために、危険を顧みずに勇気ある行動をとる時期である。

2段階:ハネムーン期(1週間~6ヶ月間)
 劇的な災害を共にくぐり抜けてきたことで、被災者同士の間に強い連帯感が生じる。外からの援助やサポートに希望を託しながら、皆で瓦礫や残骸の片付け等、互いに助け合う。この時期は被 災地全体を暖かいムードが覆うが、これは世間の注目が減少すると、次第に否定的な感情へと移り変わる可能性がある。

3段階:幻滅期(2ヶ月~12年間)
 被災者の忍耐が限界に達し、援助の遅れや行政の失策への不満が噴出する。やり場のない怒りに駆られたり、喧嘩などのトラブルも起こりやすい時期である。被災者の間で様々な依存症や心理的病状が現れ、自殺の危険性が高まる。被災者は個人個人の生活の再建や自分の問題の解決に追われるため、第二段階で味わった 地域の連帯感や共感が失われていく

4段階:再建期(数年間)
 被災地が「日常」の状態に戻るに連れ、被災者も生活を建て直すために勇気を持つ段階。地域の再建に積極的に参加することで、自信も回復してくる。ただし、心の支えを失ったり、復興から取り残された人にとっては、ストレスの多い生活が続く。


被災者側からは、状況を改善してくれる「機能」よりも、心配してくれる人がいるのだという「寄り添う存在」に救われる場合も多い。「忘れ去られる」ということが一番辛いのではないだろうか。福島の放射能汚染問題は現在進行形である。東日本大震災での「心のケア」はまだまだ必要とされている。





今後期待されるボランティア

1.ボランティアコーディネーター
被災者、被災地の回復具合を見ながら、どこにどのくらいの必要があるかを判断し、外部からのボランティアをしたい人を配分してゆく役割。この役割を負うのがボランティアセンターであり、これなしには、混乱と無駄が出てしまう。災害が起ったらまず、立ち上げなければならないのが、このボランティアセンターであり、ボランティアコーディネータ-の配置である。

2.被災状況情報ボランティア
東日本大震災においては物資の配給にムラがあり、ほとんど届かない避難所もあったと聞く。被災地状況の現状を早く掴む情報システムやツールが必要とされる。クラッシュジャパンでは米国ホイートン大学人道災害研究所との協力によりタブレットやスマホで使える被災地情報把握ソフトを開発中である。実際に運営するには現地で情報をインプットしてくれるボランティアが必要となる。

3.防災ボランティア
国連の試算では、防災のための1ドルの投資は災害時の対応の7ドルに匹敵するという。自然災害自体は防げないが、減災はできる。ハードの面での耐震化、家具の固定。ソフトの面での防災意識の向上、「助け合い」のコミュニティ作り、要援護者の救助体制作り、自治会、行政、NPOなどのネットワーク作りなどが必要とされている。それらを助ける、防災ボランティアの存在が期待されている。防災の「意識」「知識」「技術」を持った民間防災士を育成するため、日本防災士機構が主催する防災士養成講座がある。http://www.bousaishi.net/

3.多様なボランティア
まず、ハザードの違いによりボランティアの形態が変わるということ。水害時には人海戦術で短期間型のボランティア活動がなされるが、大地震時には、被災地が広範なこと、被災者のニーズが多様なことから、それらのニーズに個別に対応する長期間型のボランティアが必要とされる。また、地域性(脆弱性)による違いもある。山間部では過疎、高齢化、孤立化の問題がある。都会では住宅密集や、高齢化に加えて高層階難民の問題がある。停電でエレベーターが止まれば、高層ビルの上階の人々は孤立化する。さらに高齢化が拍車をかける。非常階段はあっても地震の揺れでダメージを受けている可能性があるし、たとえダメージがなくても10階以上を高齢者が水や物資を持って階段を上り下りすることは不可能と言っていい。そこで、階段を上り下りして水や物資を届ける若者による「運び屋」ボランティアが大いに役に立つことになる。


いずれにしても災害時に行政ができることには限界があり、隙間を埋めるボランティアの存在は被災地に無くてはならない存在となっている。

しかし、同時にボランティアが被災地の邪魔になってはならない。宿泊や食事の準備のないまま現地にいってもお世話をかけるだけになってしまう。また、被災者への接し方など、ある程度の訓練も必要。また被災地の現状、被災者の話を聞く事でボランティア自身心理的傷を負うことが予期されるので、きちんとしたディーブリーフ(被災地から出る時のオリエンテーション)も必要となる。以上のことから、宿泊ベースを持つ専門的な災害支援団体を通して行くことをお薦めします。

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災害支援団体クラッシュジャパン 次期東京災害対策担当
日本防災士機構認定防災士
栗原 一芳
crashkazu@gmail.com

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