「危機管理」という概念が日本に普及した契機は、1962年のキューバ危機の時でした。当時の危機管理は「国家的危機に対する国家首脳の対処」のことでした。3:11以降、日本の会社や組織でも「危機管理」という言葉が語られるようになってきました。私自身も、あるキリスト教団体の危機管理主任をしています。自分の団体の職員が海外での事件に巻き込まれたら?大災害に遭ったら?誘拐されたら?などなどシュミレーションして対応を考える必要に迫られています。
「財団法人日本再建イニシアティブ」によると日本を襲う国家的危機は・・・
1.尖閣諸島に中国人市民が上陸する日 自衛隊との衝突?
2.1000兆を超える国家債務と国債暴落それに伴うハイパーインフレ
3.都市部ライフラインを狙うサイバーテロ
4.パンデミック(大流行性伝染病)
5.首都圏直下型地震
6.エネルギー危機 ホルムズ海峡閉鎖
7.北朝鮮崩壊と大量難民流入
8.核テロ 都心へ核ミサイルが、原発テロ
9.国家的少子化と人口減少。超高齢化社会。若者がクーデターを起こす日?!
危機管理とは「市民生活に重大な被害を生じさせる事象に対して、研究、予防、対処、修復する活動」であると定義されています。(防災士研修センター)
もちろん、救急事態への「対処」は言うまでもなく、その前後に拡大して考え備えることも必要なのです。防災は正に、そういった概念です。まずはやってくるであろう自然災害や危機事象を研究し情報を集め、「正しい恐れ」を持つ事からです。自然災害に関しては、防災が減災につながるのです。しかし、「危機意識」が無いと防災に取り組みません。
「災いは忘れた頃にやってくる」
「備えあれば、憂いなし」
緊急時の命令系統、連絡経路を明確にしておく。
危機管理においては現場近くにいる者が一時的な担い手となります。(現場主義)ですから、自然災害の避難勧告、避難指示は市区町村長が出す事になっています。緊急時には情報やコミュニケーションの混乱が起ります。それが危機を煽ってしまいます。ですから平常時に連絡方法、意思決定方法を決めておく必要があります。緊急時には意思決定は少人数によるトップダウンを原則とします。組織においては普段から信頼関係を築き、コミュニケーションを円滑にしておくことが重要です。「多すぎる情報」は情報が「全く無い」ことよりも良いのです。これは行政と住民との間でも同じです。また、会社、団体のリーダーや危機管理者自身が死亡、行方不明になった時の代理者を前もって決めておくことも大事です。
1994年1月17日、ロサンゼルスを襲ったM6.9のノースリッジ大地震。当時のクリントン大統領は地震発生後15分で第一報を受けました。1時間後には軍が出動して消火活動にあたり、死者は61名で済んだのです。一方、1995年1月17日M7.2の阪神淡路大震災が起ります。当時の村山首相が第一報を受け取ったのは1時間50分後。翌朝は財界人と朝食会、ほとんど何もしなかったのです。この違いで6433名が死亡。「天災の後に人災が来た」と言われていますが、同じ事が3:11でも繰り返されたのではないでしょうか?福島第一原発は、それでも幸運が重なり、あの程度で収まりました。東日本が壊滅状態になることも十分あり得たのです。
災害は弱いものいじめ
フィリピンのスーパー台風被害を覚えていますか?
海岸沿いのバラックのような建物は倒壊してしまいました。あれが頑丈な鉄筋のビルだったらどうだったでしょうか?残念なことですが、災害は「弱いものイジメなのです。つまり物理的に弱いもの(脆弱な造りの建物)、人的に弱いもの(高齢者や障害者)に被害が集中してしまうのです。それがわかっているので、事前の備えが必要になります。防災は堤防を高くするなど、行政のレベルでの取り組みもあれば、個人レベルでの、建物の耐震化や家具の固定などの取り組みがあるでしょう。また、市民共同体レベルでの取り組みもあります。高齢者の「みまわり隊」ボランティアや災害時に車いすの人を運ぶボランティア体制などです。このように「支援」ボランティアだけでなく、「防災ボランティア」も必要なのです。
「今日、70%の確率で雨が降ります。」と天気予報を聞いたら、大方の人は傘を持って外出するでしょう。雨が降っても傘をさせば、ほとんど濡れない(被害を受けない)で済むからです。これはある意味での防災です。防災すれば減災できるのです。「南海トラフ」も「首都直下」も今後30年で70%の発生確率です。大地震をストップすることは出来ませんが、備えることで、災害を減らすことはできるのです。
国家的危機対応の必要性
解釈改憲による集団的自衛権行使が容認された今日、日本が戦争に巻き込まれる可能性も出て来ました。大災害の危険性も指摘されています。戦後70年を迎える今、国が激変することがあり得る時代に入っているのです。ますます「危機管理」の重要性が増しています。こわいのは、日本が戦争やテロの対象となると、日本にある54基の原発が狙われるということです。それらは地上にむき出しのまま建っているのです。原子爆弾を落とさなくても、原発めがけてミサイルを打てば、日本は壊滅的なダメージを負ってしまいます。軍備を増強するより、まず原発を廃止し、核物質を地下深くに埋めるなどするほうが、よっぽど緊急のような気がします。
(福島第一原発 3号基爆発)
このブログでも以前指摘しましが、南海トラフでは被害総額予測220兆円、首都圏直下地震では95兆円と試算されています。しかし、これは原発被害を入れていません。また、首都東京が壊滅的ダメージを受ければ、国債や為替レートの暴落や、ハイパーインフレなど経済的災害が起る可能性があります。
さらにダメージが限度を超えるとさすがの日本人も礼儀正しく振る舞ってもいられず、略奪、強奪といった犯罪も増加することも考えられます。災害時には「デマ」「流言」が飛び交い二次災害が起ります。ヘイトスピーチなどが行われている新大久保などでは、関東大震災時のような在日韓国人、中国人への暴動、虐殺が起きる可能性もあります。危機対応の体制つくりが迫られています。
そして、日頃から顔の見える「愛と信頼のコミュニティ」を築いてゆくことが何よりも大きな防災となるのです。
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関連テーマ参考本
「日本最悪のシナリオ9つの死角」 日本再建イニシアティブ 新潮社
「国家破産パニック」 浅井隆 第二海援隊
「危機対応 最初の48時間」 ケビン・エラーズ著 いのちのことば社
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一般社団法人 災害支援団体 クラッシュジャパン
次期東京災害対策担当
日本防災士機構公認 防災士
栗原一芳
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