2012年6月29日金曜日

災害時にはリーダーが必要



 国連国際防災戦略事務局(UNISDR)が2000年1月に設置されました。事務局本部はジュネーブですが、日本では兵庫県にこの関係の事務所が置かれています。2005年1月に国連防災世界会議の成果文書として採択された「兵庫行動枠組み2005−2015:災害に強い国・コミュニティの構築」は、今後10年間の防災指針が掲げられています。枠組みのステップは1)防災を優先事項に、2)災害リスクを知り、行動する。3)防災知識を高める。4)リスクを減らす。5)事前準備をし、緊急時に行動できるよう備える。となっています。

東京都の対応としては、大災害時には都庁内にある東京都防災センターが情報分析、災害対策の審議、決定、指示を行うコマンドセンターとなります。そして、立川地域防災センターが東京都防災センターの指揮の下に警視庁、消防庁、気象庁、区市町村と連絡を取り合い、災害対策を実際に行います。また、平成25年4月より、東京都帰宅困難者対策条例が施行されます。都民の取り組みとしては、「むやみに移動を開始しない」(一斉帰宅の抑制)、家族との連絡手段を複数確保するなどの事前準備。(伝言ダイヤル171など)、事業者の取り組みとしては、3日分の水(一人当たり1日3リットル、計9リットル)や食料の備蓄、従業員を帰宅させず、事業所内に留まらせることなどが指導されます。

今度の震災では、東京都23区の7割で震度6強以上が予測されています。直下型なので、震災の特徴は建物の倒壊と火災です。とくに、火災は山手線と環七の間の木造住宅密集地となります。ここで火事になる火災旋風となり、30Mの炎と煙の壁ができることになります。また、墨田区、葛飾区、台東区の木造密集地帯でも同じことが起こるでしょう。つまり、東京都心部は炎と煙の壁に囲まれ人々は帰宅できなくなるということです。職場での生き残り準備をしておく必要があります。前回3:11の時に湾岸にある火力発電所の多くで液状化現象が見られました。この夏の東京の電力の50%は湾岸にある12基の火力発電所に頼っています。もし、震度7の激震でそれらが破壊されれば、現在の東京都の電力復旧目標の6日では復旧できず、長期的な停電になる可能性もあるのです。そうすると前述した高層難民の問題はさらにシリアスになります。


先日、湾岸のフィールド調査に行ってきました。豊洲の高層マンションでは、各階に防災リーダーを立てる計画があると聞いています。ともかく、公共の助けはすぐには期待できないので、十分な水と食料の保管、隣近所との協力関係は必須です。ただ、都会では一人暮らしも多く、近所付き合いも薄いので、負傷者を見いだして行くのも困難な作業となるでしょう。豊洲のあるマンションでは、意識を持った人が行動を起こし、災害に備えてお互いを知るため、自主的に、同じフロアの人を招きホームパーティを開いて喜ばれた話も聞いています。お互い顔を見合わせていても動きません。災害時には仕えるリーダー(サーバントリーダー)が必要です。意識を持った市民が立ち上がる時が来ています。

2012年6月6日水曜日

都心部で地震に会ったら・・・・(実践編)


都心部で地震に会ったら・・・・(実践編)

前回、書きましたが、最大震度7の直下型だった阪神・淡路大震災では、死者の87.8%が家屋などの倒壊による圧死、10%が焼死でした。(多くは火災時に建物に挟まれて動けなかったのです)耐震補強と家具の固定は基本です。

オフィス
オフィス、ことに高層ビルのオフィスではコンピュータやコピー機などの固定、
(これらが凶器になります。)棚の固定などは基本中の基本対策です。最近の高層ビルの場合、倒壊は無いでしょうが、長周期地震動で4mの水平の揺れが10分くらい続きます。そして、逃げ道の確保をしてください。出口を塞ぐ可能性のあるものを出口付近に置かないように。原則は、重いものは下、軽いものを上に。地震が来たら、窓から離れ、机の下に。仰向けはダメです。コントロールできなくなります。4つんばいで、テーブルの足を掴む用にしてください。私は池袋の防災会館のシュミレーション・マシーンで震度7を体験しましたが、テーブルの下に入ってもテーブルの足を掴んでないと振り回されてしまいます。また、机の下の隣の人とぶつかってしまいます。机が無い場合は壁や柱の近くで壁側を背にしてL字に。出来る限り、ファイルやカバンで頭を保護してください。普段から自分のデスクの回り、上に何があるかを確認しておいて、凶器と化すものが無いか、知っておく事が大事です。最近、大手会社の社員から聞きましたが、3:11の時、誰も避難指示をしてくれなかったと。自分の身は自分で守るようにしておいてください。

又、高層ビルの場合、数日閉じ込めになる可能性もあるので、非常食をデスクに保管しておく事も必要でしょう。繰り返しになりますが、トイレは大問題で、中央防災委員会の発表では、東京23区で81万7000人がトイレに行けなくなるというのです。千代田区ではトイレは4−5時間待ちとなるそうです。特に女性の方は対策が必要です。

また、帰宅難民が517万人です。都内に友人や知人が居る場合、前もって対策を話し合っておきましょう。会社に宿泊の用意がある場合は、無理して帰らないほうが良いかも知れません。大地震の時は緊急車両用に幹線道路は封鎖されます。又、車道は落下物などで車が通れない可能性が大なので、移動は自転車がベストとなるでしょう。安いものなら1万円程度で買えます。ある程度の現金を携帯していることをお勧めします。

高層マンションの場合は1週間程度、閉じ込めを覚悟して水や食料、ガスコンロなど用意しておいてください。また、マンションの自治会や管理会社と話し合って、可能なら5階ごとに水や食料を保管しておくことをお勧めします。


エレベータ
エレベータ閉じ込めが12000人と予測されています。地震の揺れを感じたら、全ての階のボタンを押し、とにかく出てください。最近のものは近くの階に止まるようになっています。ドアが開かなくなった場合、「非常用呼び出しボタン」で管理会社を呼び続けてください。ただし、道が閉ざされるので、管理会社はすぐ来れないと理解しておいてください。また、エレベータの天井のフタは開きません。無駄なエネルギーを使わないで、動かないで待ってください。家を出る時はカバンにラジオ、インターネットにつながる携帯電話、レジ袋、笛を携帯されることをお薦めします。笛は閉じ込められた時に知らせるため、レジ袋は万が一のトイレ用です。


地下道/地下鉄
ある防災の本には地下は地上の3分の1の揺れとありました。3分の1かどうかはわかりませんが、私は3:11の時、有楽町の東京国際フォーラムの地下階にいました。もちろん、大きな揺れは感じましたが、後で聞いた高層ビルの状況に比べると落ち着いていたように思います。地下階のセミナーに集まっていた人々は始めの揺れでは座ったままで避難してませんでした。狭いところはダメですが、国際フォーラムのように構造がしっかりしていて、スペースがある地下は、モノが落下してくる町中より安全と言えるでしょう。ちなみに地下道には60mごとに非常口がありますので、あわてず、出口に進みましょう。

地下鉄に恐怖を感じてる人は多いようです。地震が来て、一時的に停電になっても非常用電源で約1時間は電灯はついています。あわてて線路に降りないように。高圧線があったりして危険です。震度7では電車は脱線しますが、おそらく揺れ始めると減速するので、実際は脱線の可能性は少ないのではないでしょうか。最悪の場合は、真っ暗になっても携帯の明かりで壁づたいに、風上を目指していけば出口にたどり着けるでしょう。
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携帯しておいたほうがいいもの
—ラジオ
—レジ袋
—笛
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小さな水ボトルも携帯できれば万全ですが、少なくも地震が起こったら近くの自販機で水を確保しておきましょう。


自宅
木造2階建ての場合はなるべく2階に寝るようにしてください。1階部分がつぶれてしまうこともあります。家具の固定は基本です。特に寝てるところに落ちて来ないように、落下物や倒れて来るものが無いか、よく注意してください。3:11でも練馬の高層マンションの15階では冷蔵庫が倒れたそうです。食器棚の扉にかんぬきを。又、窓に割れ防止フィルムを貼るなども必要です。ガラスや皿が飛び散っているかも知れません。素足で怪我しないように、枕元にスリッパを用意。また枕元に携帯ラジオ(地震の情報をすぐ聞く)、メガネ使用者は、ケースに入れたメガネ(ところで予備メガネも1本作っておくといいです)を置いておくようにします。火災や建物倒壊の時、即座に持って行けるよう、懐中電気、貴重品、重要書類など、バックパックや、小さなスーツケースに入れて用意しておくといいでしょう。ちなみに、電池のいらない手動式ラジオ付きライトが1500円−2500円で買えますので、1台は買っておくことをお勧めします。料理中の場合、まず、机の下へ。最近のコンロはマイコンが付いていて揺れが起こると自動的にガスが止まります。ライフラインが止まることを想定して、飲み水の保管。その他に使う水のため、風呂に水をはっておくのも助けになります。水が止まれば、トイレが使えません。非常用トイレも必要でしょう。便器が使える限りは、非常トイレ用のビニール袋(凝固剤付き)で間に合います。

一度、東急ハンズの防災グッズ用品のセクションや、アマゾンの防災グッズなど目を通しておくのもいいでしょう。近くの広場や避難所になる小学校など確認しておくことも必要です。自治会の防災訓練などにも参加しておくことが必要でしょう。是非、家族で一度、防災の事を話し合ってください。

災害時の連絡にはNTTの「災害用伝言ダイヤル」があります。災害時の通話規制中でも使えます。「171」をダイヤルし、録音の場合は「1」ガイダンスに従って30秒録音できます。再生は「171」から「2」ガイダンスに従って、登録ナンバーを入力すると録音メッセージが聞けます。また、携帯が使えない場合を考えて公衆電話用の10円を用意しておくことも必要です。停電やシステム障害で、ATMが使えない場合も想定して現金をある程度持っている事も必要でしょう。


最後に災害後の人々の心理的変化を知っておく事も役立ちます。
1.災害後の「茫然、自失期」
2.被災者同士が強い連帯感で結ばれるハネムーン期
3.直後の混乱が治まり始め、被災者の不満が噴出する「幻滅期」
4.復旧が進み、生活の目処が立ちはじめる頃の再建期
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お役に立ったならば幸いです。
www.crashkazu (栗原)

2012年6月4日月曜日

対策 ー その時どうする?



今まで、災害予測を見てきました。それではどのように対策を取ればいいのでしょうか?災害時の基本は

1.            自助 —自らの命は自らが守る
2.            共助 —隣近所で助け合う。
3.            公助 —行政機関による救出救助

公共の助けはすぐには来ないと思ってください。3日間は自力で生き延びることを考えなければならないのです。阪神淡路大震災の経験からは、近所の人に助けて頂いたが7割、自力で脱出が2割、公共の助けで助けられたのは1割にすぎません。始めの24時間では、制服組はあまり役に立たないと考えておいた方が良いでしょう。そして、いかにお隣さんとの助け合いが重要かがわかると思います。阪神淡路の体験者が言っています。「助かった人が助けるのだ」と。ですから先ず、あなたが何として助かってください。他の人を助けるためです

最低限、事前に出来る地震前対策は
1.建物耐震強化
2.家具の固定

です。大きな地震では家具の下敷きになって負傷、死亡することが多いのです。家具の固定しておいたお陰で命が助かることが多いのです。高層オフィスでは机の固定やコンピューターなどの機器の固定も必要でしょう。


オフィスや家で地震が起こったら、むやみと動かない。

1.ガラス窓から離れる。頭を保護
2.コピー機や冷蔵庫から離れる
3.震度5までなら机の下に隠れる
4.机がなければ、壁や柱近くに避難

ただし、震度7では状況が違ってきます。
震度6強以上では、「直撃」「閉じ込め」回避が鉄則となります。

1.机の下より、外の広いところへ。建物自体が倒壊の可能性あり。ビルの上からの落下物に注意。

2.日本家屋なら2階へ避難 (一階は倒壊の恐れ有り)

3.家電が飛んでくる。リモコンが水平に飛んで来て直撃するなど。

4.出口を確保。閉じ込め回避。以前から出口を塞がない工夫。

5.普段から自治会レベルの「助け合い」体制を作っておく。

*地震直後、下敷きになった人を助けるのは消防士や自衛隊員ではなく、「あなた」です。近所同士で助け合いましょう。

最大震度7の直下型だった阪神・淡路大震災では、死者の87.8%が家屋などの倒壊による圧死、10%が焼死でした。(多くは火災時に建物に挟まれて動けなかったのです)他の震災でも津波を除くと室内での死傷がほとんどです。もう一度言いますが、耐震強化や家具の固定をしていたら助かった命が多々あるのです。また、駐車場や広場など、「外の安全ゾーン」を前もって確認しておきましょう。いずれの場合も余震があることを念頭に。倒壊しそうな家は注意。3日はライフラインが止まることを念頭に食料、水を確保しておくことです。(高層マンションでは、1週間分が望ましいですが)

それから、大事なのは外出避難の場合はブレーカーを切っておくです。阪神・淡路大震災の火災の6割は通電火災(電気が復旧した時に起こる火災)でした。


以下も参考にしてください。

消防庁防災対策サイト

東京都地震対策情報
(英語ページあり)


さらに・・・

池袋防災会館(03-3590-6565  池袋西口メトロポリタンホテル隣)では、震度7を無料体験できるシュミレーションマシンがあります。

東京臨海広域防災公園では、大地震後72時間どういう流れで避難するか
の体験ツアーをやっています。

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crashkazu@gmail.com (栗原)

2012年6月1日金曜日

大都市ならではの問題



 我々の生活はどうなるのでしょう? 一番問題はライフラインの停止です。以下、東京湾北部地震の場合の東京都の試算です。

ライフラインの復旧
 
停電    110万棟       復旧目標  6日
断水人口  390万人       復旧目標 30日
ガス停止  110万棟       復旧目標 55日
通信不能(固定電話)74万回線   復旧目標 14日

電気経路の修復なら割合速く復旧しますが、東京の電力の50%は東京湾岸にある12基の火力発電でまかなっています。従って、それらの発電所が破壊されれば、電気の供給に影響が出ます。3:11の直後には、それらの発電所で液状化現象が起こっていました。そして、断水の回復が30日とは!3日分のウオーターボトルで足りるのか心配になります。さらに、大都市ならではの問題があるのです。


大都市ならではの問題
近代化した首都東京で震度7は経験したことがありません。なにしろ政治、経済、メディアの中心である首都、日本の頭脳なのです。そして、人口密集の度合いが全く違うのです。3:11の東日本大震災とは全く違った3大難民が発生すると予測されています。以下は防災ジャーナリスト 渡辺実の「都市住民のための防災読本」(新潮新書)を参考に他の情報も加えてまとめてみます。

      高層難民
      帰宅難民
      避難所難民

A. 高層難民
高層マンションに居住の場合、1週間程度難民となる可能性あります。直下型地震では、首都圏のマンションで18万基のエレベーターが停止。1500名が閉じ込められる予測です。都内のオフィスを入れると12000人の閉じ込めが予想されています。震度6以上では道が瓦礫で埋まり車が通れなくなる可能性があり、従って管理会社が到達するのには1週間後ということさえありうるのです。そして、エレベーターが停止すると高層マンションの上層部に住む人々は「閉じ込め」状態となってしまいます。「階段があるでしょ」と言うかも知れません。私は若い頃、10階建ての10階に住んだ事があり、運動のため階段を昇ったことがありますが、かなりきついです。ましてや高齢者では。また、近所の避難所で物資配給が始まっても、下に降りて小学校などに取りに行き、配給物資を持って昇って自分の部屋まで戻らなければなりません。階段で昇れるのはせいぜい5階までが限度で、配給物資を持ったまま高齢者が10数回の階段を上り下りする事は現実できないのです。つまり、1週間は取り残されたまま生き延びる用意をしておかなければならない事になります。この本では5階ごとに水や、物資を保管しておくことを提案しています。

B. 帰宅難民
大地震が起これば、電車は止まります。東京都の試算では帰宅難民が517万人となっています。内閣府中央防災会議の被害想定では、冬の午後6時なら首都圏で650万人、東京都内で390万人が帰宅難民になる予定です。ちなみに帰宅難民ワーストターミナルは以下の通りです。

1.東京駅 14万2千人
2.渋谷駅 10万3千人
3.新宿駅  9万1千人
4.品川駅  8万9千人
5.池袋   8万5千人

公共施設やコンビニが「帰宅支援ステーション」として、水、トイレ、情報を提供することになっていますが、現実、コンビニもガラスが割れ、商品が散在。水を提供といっても断水。しかもトイレは1つ、店員もパニックしている状態でどこまで対応できるかは疑問なのです。トイレは大問題で、中央防災委員会の発表では、東京23区で81万7000人がトイレに行けなくなるというのです。千代田区ではトイレは4−5時間待ちとなるそうです。特に女性の方への対策が必要です。また帰宅マップも、震災後は町の様子が全く変わってしまい、通れる道も通れなくなっていることも考慮する必要があります。また昼の風景と夜の風景も違っているので慣れない道では迷ってしまう事もあります。帰宅難民はなるべく帰宅しないで、近くの被災者を助けることも必要ではないでしょうか。災害時には被災者が被災者を助けることになるのです。

C. 避難所難民
中央防災会議の首都直下型地震被害想定によれば、東京湾北部地震が最悪のタイミングで発生した場合(冬の午後6時、風速15m)、家屋倒壊、火災などで東京都、神奈川県、埼玉県を中心に約700万人の避難者が発生すると、想定されています。そのうち240万人は親類や知人宅へ避難するにしても、残りの460万人は避難所での避難生活を余儀なくされます。しかし、460万人という数字は名古屋市の人口の2倍です。単純計算して東京ドームの12個分のスペースが不足するのです。結果、避難所難民が265万人出ると想定されています彼らはどこに行ったら良いのでしょうか?さらに避難所に指定されている公園の回りの家屋が燃えていたり、古い小学校などは耐震性の問題があり安全とは言えない場合もあるのです。大きい会堂を持つ教会などは是非、
場所を解放していただきたいです。
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