2013年11月5日火曜日

東京湾の津波






揺れを感じなくても大津波が来ることがある

「地震津波」は海底下の比較的浅い所を震源として大きな地震が発生すると、断層運動により海底地形が変動し、それが海水に伝わり、海面が上下することにより津波が発生する。断層破壊がゆっくり進行すると、断層がヌルヌル動き、陸上では強い揺れを感じない。しかし、津波は発生する。1960年のチリ地震津波では北海道から沖縄にかけて142名の死者が出た。遠方で起った地震で日本で揺れを感じなくても津波が襲来し犠牲者を出す事がある。現在ではハワイにある「太平洋津波警報センター」が環太平洋のどこの海域で発生した津波に対しても、各国の地震観測網のデーターをただちに分析して、津波の規模や、進行方向、到達時刻などを推定し、諸国に対して速やかに津波情報を伝達する体制が整備されている。


津波の特徴
1.津波の速さはジェット機なみ
太平洋の平均水深4000メートルでは、津波は時速700キロというジェット機並みのスピードになる。

2.津波は何波も来る
震源域からの津波はひとつであっても、沿岸部での入射、反射、湾内震動などで、何波もの津波が発生する。沿岸には時間間隔をおいて、津波が複数回襲来する。南海トラフ地震の予測では静岡市に13メートルほどの津波が来るが第一波は2分で到達するという。そして、第一波より、二波、三波のほうが高いケースが多い。いずれにしても第1波が去ったからといって安心してはならない。海岸に出る事は禁物である。

3.津波は湾奥で高くなる。
海に向かってV字に開いている湾は、入り口が広く、奥へ行くほど狭くなるため、津波のエネルギーが奥に向かって集中し、波高が大きくなる。東京湾の場合は入り口が大阪湾に較べて狭く、湖底も50mほどで比較的浅いので大きな津波は発生しないとされている。ただし後述するように、被害が出ない訳ではない。

4.津波は川を遡上する。
       2011年東日本大震災では、北上川を40kmも遡上している。南海トラフでは大阪  
       湾や名古屋湾に5mの津波が襲来するとされているが、何らかのトラブルで防潮堤を超
      えてしまえば、津波は川を遡りまた、道路を進行し、JR大阪駅、JR名古屋駅周辺にまで
      浸水が及ぶという。冬の午後6時、大阪で低避難率の場合の想定では、津波で13万
      2967人(うち1万8976人は河川の堤防崩壊に伴う浸水で死亡)が犠牲者とな 
      る。




津波から身を守るには
津波は1mで死亡率100%といわれる。たとえ20cmでも大人が転倒する。一回限りの波ではなく、水の壁の圧力だからだ。海岸で強い揺れを感じたら、すぐに避難する。なるべく鉄筋コンクリート造の建物のできるだけ高い階(できれば5階以上)を避難場所とする。津波は建物を壊し、壊した瓦礫を漂流物として運ぶので二次災害が起る。さらには海岸のコンビナート等が漂流物の衝突で爆破し火災がおこれば、火炎を内陸に運び込む可能性もある。ただし、全国最大規模の梅田の地下街の浸水被害や、東日本大震災で深刻な被害をもたらした津波火災は、「想定する手法が確立していない」(府防災企画課)などとして想定には含まれていないのが気になる。ともあれ津波/浸水の場合は「遠く」より「上」に逃げることが鍵となる。火災や浸水が無い限りは地下道は比較的安全な場所ではあるが、浸水の可能性があるときは、すばやく地上に出る必要がある。


伊豆諸島では巨大津波
今回、東京都大島での台風被害が注目された。南海トラフ地震では、東京湾には巨大津波はないものの、伊豆諸島では巨大津波が予想されている。大津波高は、新島で30.16メートル、式根島で28.15メートル、神津島で28.43メートル、八丈島で18.07メートル、青ヶ島で17.68メートル、三宅島で16.98メートル、利島で16.18メートル、伊豆大島で15.76メートル、小笠原諸島の父島で18.52メートルなどと想定。到達時間は15分程度(新島)と見ている。ちなみに、鎌倉で10m、千葉館山で11mの予想。




 東京湾は大丈夫か?
総合危険度マップをご覧になれば分かるように、隅田川沿いの江東区、墨田区、台東区、荒川区、江戸川区、葛飾区あたりが最も危険度が高い。この地域は海抜が低く、津波、川の氾濫、さらに古い木造建築も多く、火災や倒壊も起りやすいからだ。いわゆる「川の手」地区は江戸時代にはまだ、大湿地帯で人が住める場所ではなかった。江戸川区では川の氾濫により5.5メートルの浸水が想定されており、67万人の住民のうち3階に避難できる人の数は13万人、他の人々は逃げ場を失ってしまう。早急に避難場所の「高台」作りが必要となる。台東区の浸水ハザードマップを見ると区のほとんどがブルーで塗られ浸水の可能性が示されている。上野の山に避難するよう指示されている。


大都市、東京は防波堤で囲まれている。堤防の高さは平均3.5m。しかし、部分的には築40年を過ぎている。老朽化が懸念される。また、液状化や激震で堤防が沈下したり破壊される可能性もある。もともと東京や大阪、名古屋といった大都市は河口にあり、大昔は海だったところで地盤は強くない。堤防に守られている都市なのだ。品川区の防災館のパネルには満潮時に2.2メートル、津波で1上がっても堤防は3.5あるので大丈夫とあるが、最近の政府の南海トラフの予測では、品川は3mの津波とある。



基本的には水門が閉鎖されていれば堤防内への浸水は見られず人的被害は発生しないことになっている。過去の関東の大震災を基にしたシュミレーションから割り出した東京湾の水門の津波高が図に示されている。想定は水門閉鎖時で、地殻変動を考慮した値となっている。中央区で最大津波高2.51m。江東区では最大2.55m。問題は激しい揺れで水門のレールが歪んだり、停電になった時、果たして水門を降ろして津波をシャットできるのかである。しかも、湾岸は液状化の被害も出やすい。東京湾北部地震(M7.3)の想定では中央区最大津波高1.88m、江東区1.75mとなっている。



先日、取材に行った両国橋では写真のように、通常でも川の水面から岸辺テラスまで20センチくらいしかない。堤防も3メートルあるかないか。堤防への反射などで高さを増した津波の遡上波が堤防を超えないだろうか?3:11の時、震度5強でも隅田川では岸辺テラスへ浸水があり、1.46mの津波が観測されている。首都圏直下型では湾岸は震度6強から7の激震が襲う。行政としてはハザードマップの活用を勧めてはいるが、持っている人は15%ほどだという。

こちらにもわかりやすい説明が載ってます。







地下鉄は大丈夫か?
地下は地上に較べ揺れは軽減される。また大江戸線など新しい線は耐震設計となっていると聞く。しかし、銀座線や丸の内線は老朽化しており、トンネルの壁からの浸水が心配だ。東京の地下水が20m−40m上昇している問題がリスクをさらに高めている。大地震でホーム壁にダメージがあれば、水が流れ込む可能性がある。3:11時、飯田橋駅の壁から謎の水漏れがあったという。また、秋庭俊氏の「大東京の地下99の謎」(二見文庫)で「千代田線国会議事堂前駅のホームの壁は水が染み出ており、排水路には音を立てて常に相当の水が流れている。」とあるが、現在は水の音は聞こえない。ただし、水漏れのほうは本当だったようで、現在漏水工事をしている。トンネル自体は写真のように金属の補強板が張り巡らされ、見る限りは、かなり丈夫な印象を受ける。




東京は地形的に高低がある。丸ノ内線は地下鉄なのに、後楽園駅は地上にある。地下鉄の場合、高いところで水が出れば、ひと繋がりのトンネルなので低い他の駅へと流れてゆく。湾岸の低い駅で浸水が始まれば、さらに水はそこに溜まってゆき駅が水没することになる。「荒川土手が北区で決壊」の想定をすると、地下鉄入り口に高さ1mの止水板を設置しても、東京都市部の130駅のうち最大で81駅が改札階まで浸水。3時間で大手町にも到達。ゼロメートルでなくても地上に水が到達しない霞ヶ関や六本木駅でも浸水することがわかった。地下鉄路線網が水路の役割を果たして被害が広がるからだ。シュミレーションにかかわった関西大社会安全学部長 河田恵昭教授は「震災対策で最も遅れているのが地下鉄の水害対策と断言する。また地下鉄の地上入り口から水が流れ込み始めると、下から階段を昇るのが困難になる。川や海の近くの駅の場合は即、地上に出て高い建物に避難する必要がある。



最近は地下鉄の地上入り口に海抜が示されている。水道橋駅入り口で5.4m、内幸町駅で3.5m。有楽町線月島駅では海抜0.9m! 最近は豪雨も多く、地上からの浸水対策が進んではいるが不安も残る。

日比谷は昔、日比谷入江と呼ばれ海水が入って来ていた。明治時代に現在の霞ヶ関から日比谷公園までを官庁街にする予定だったが、日比谷公園地下の地盤が弱く、計画を変更し、公園とすることになったという。ちなみに日比谷公園の地下には巨大な貯水池があり、災害時の給水所となる。このあたりの海抜が3.5mほど。




オリンピックは大丈夫か?

2020年のオリンピックの施設は図のようにすべて湾岸に設置される。その多くは東京湾北部岸壁部分となる。それと懸念されるのが選手村。晴海の岸壁部分の広場に作られるが現在は十分な防潮堤もない。3:11の時、晴海で1.5mの津波が観測されている。(ちなみに筆者が観察したところでは、勝ちどきの岸壁も海面から50cmくらいしかない。)今後、盛り土で対処するようだが、例え浸水しなくても地震体験の無い他の国の選手達は一応にパニックするだろう。また避難先も橋を渡らねばならず、大人数が一時に避難となると相当なパニックになることが予想される。今後、30年で70%の発生確立という首都圏直下型地震。東大の地震研究所によると4年で50%。そういう土地柄であることを頭に入れておかなければならない。もう想定外は許されないのだ。







------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 

要請に応じてパワーポイントでの「防災啓発講演」を行っております。都内であれば、交通費のみ支給でボランティア奉仕致します。講演はパワーポイントで行いますので、プロジェクターとスクリーンのご用意をお願いします。お問い合わせは下記のメールまで。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
災害支援団体クラッシュジャパン次期東京災害対策担当
日本防災士機構認定 防災士

栗原 一芳
crashkazu@gmail.com
ーーーーーーーーーーー


0 件のコメント:

コメントを投稿