2013年11月26日火曜日

避難所 Q&A



 地震は約10秒。避難所が消えたのは5年後でした。(阪神淡路大震災)





Q. 避難所には地域住民だけしか入れないの?

必ずしも地域住民に限定されず、たまたまその土地を訪れていた旅行者なども対象になります。ただし、避難対象住民に対して指定避難所の収容力は平均3割ほどと言われています。筆者の地元では、避難対象住民9000人に対して650人ほど(約7%)しか収容できない避難所もあります。また、行政が指定している避難所が川べりだったり、液状化の危険があったりするため、自治会が自主的に、より安全な場所に避難する計画を立てている地域もあります。また、外国人の避難先は言葉の問題もあり、日本人一般の避難所とは別に、インターナショナルスクールなどが指定される場合がありますが、日中に災害が起れば、学校の生徒や先生達で体育館は一杯になってしまいます。また、避難所に指定されていても私立学校の場合、使用した体育館のダメージなどの修理費が市町村からは出ないので、行政との協力関係がうまくいってないところもあります。現実的なシュミレーションをして事前によく話し合っておく必要があります。

東京の場合、単純計算で東京ドーム12個分のスペースの避難場所が足りないと試算されています。最悪70万人ほどが避難所に入れず、疎開などの方法を考えざるを得なくなります。阪神淡路大震災被災者の声、「小学校の避難所に行ったが、そこはもう満杯で入り込む余地が無かった。トイレを借りようとしたが、はなはだ汚く、用が足せなかった。」「家族の少ない人は出かけている間に、確保しているスペースがだんだん狭くなる。」「傾いた家でも、あるなら帰れと避難所できびしい声だった。」これが現実だろう。



Q. 避難所の運営は市町村の職員がしてくれるんでしょ?

職員も被災します。また、災害発生時には自治体は被害状況の把握、必要な物資の確保、危険箇所への対応に忙殺されるため、避難所に十分な数の職員を配置できなくなります。従って、避難所の運営は、原則として避難者を中心とした自治組織によって行われることが望ましいのです。理想的には事前に「避難所運営委員会」を自治会ごとに立ち上げて、部屋割り、役割分担などを話し合い、準備しておくことです。



Q. 避難所運営に関して何を考慮しておくべきですか?

1.施設管理者と協議し、「避難所スペース」と「非避難所スペース」を明確に区別する。学校が避難所となる場合は教員室や理科実験室などは立ち入り禁止にしておく。

2.避難所スペースを「共有部分」と各世帯の生活の場としての「居住部分」に分ける。部屋割りは世帯を単位として行い、可能な限り血縁や居住地域を考慮した部屋割りが望まれる。目安となる一人当たりの面積は最低でも2平方メートルを確保する。また、要介護者、妊婦、乳幼児世帯などは、和室、冷暖房がある部屋などを優先して割り当てるなどの配慮が必要。さらに旅行者、外国人やペットを連れてくる人の配置問題もある。また、運営委員がミーティング等で使う本部室も確保しておく必要がある。仮設トイレの設置場所、物資搬入箇所、物資保管場所も確保する。以前の災害から学べる事は、雑然と避難民を入居させるのではなく、以上のことを考慮しつつ計画的にスペースを割り振ることが重要で、体育館にびっちり詰めないで、トイレに出る通路、車いすが通れる通路を計画的に確保して配置することが重要である。また、大きな避難所では負傷者が次々に運ばれてくるので、トリアージをする場も必要となる。



3.一人暮らしの若者や高齢者が増えるなか、集団生活に慣れない人が避難所で生活を共にすることになる。当然、多くのストレスが予想される。厳しい環境の中で、少しでも快適に生活するため、最小限の生活ルールを定め、避難民全員で守ることが必要となる。ルールつくりのポイントとしては、地域の実情に合わせ、わかりやすく、シンプルに複雑にならないように心がける。事態の推移によって見直す必要もある。

        いずれにしてもリーダーがいないと統率がとれず混乱する。リーダーの下にすばやい  
        役割分担が必要。



Q. 避難所開設の手順はどうなるんですか?

1.避難所の確認 (自治体が指定するが、その避難所が安全かの評価も必要。)

2.避難所マップなどで、住民に避難所の場所を知らせる。

3.避難所の開設 (誰が体育館や備蓄倉庫の鍵を持っているか事前に確認)

4.避難者名簿の作成 (誰が何人いるのか把握しておく)

5.仮設トイレの設置 (高齢者が使いやすい位置で、十分な数のトイレ)

6.部屋割り、救援物資置き場等の指定 (居住区、非居住区の指定なども)

7.入居している避難民へのアナウンスの方法確認(場内アナウンス、掲示板)



Q. 避難所で特に配慮することは

1.阪神淡路大震災では、避難所で多くの高齢者が亡くなり、震災で亡くなった人の14%を占めるに至った。いわゆる震災関連死である。高齢者への配慮は大きな課題となる。

2.避難場所ではトレイの数が著しく不足し、しかも仮設トイレは居住スペースから遠くに設置されている場合が多い。そのため高齢者はトイレにいかなくていいように飲料水を控え、結果的に体調を崩してしまう。トイレの位置なども高齢者に近いところにするなど考慮が必要だ。また、トレイが不足するのは目に見えているので、多めに緊急トイレを自治会単位で用意しておくことをお勧めする。




3.避難場所が不快であるとの理由で車で寝泊まりする人もいる。それでエコノミー症候群となる人もいる。また、避難所ではストレスが多く、運動不足になるので、生きる気力を失う「生活不活発病」となる高齢者も多い。すこし落ち着いて来たら、避難所でのラジオ体操など、少しでも体を動かせる機会を作ることが助けになるだろう。人々が孤立しないよう、日常生活の中で地域住民が触れ合っていることが大切だ。

4.着替え時など、女性のプライバシーを配慮したスペースつくりも必要。残念ながら、このような非常時にもセクハラが起こりえる。

避難生活が長引くことになれば、次は仮設住宅入居となる。応急仮設住宅は災害救助法で規定され「住家が全壊、全焼、または流出し、居住する住宅がない者であって、自らの資力では住家を得ることができないものを収容する」となっている。使用期限は2年が原則で、使用料は無料だが、水道・光熱費は入居者負担となる。ただし、問題は土地探しである。東日本大震災では、水に浸かってない、土砂災害の無い用地を見つけるのが困難であった。用地があっても土地に住戸を目一杯建設して、集会所などを建てる余裕が無い場合もあった。あるいは、狭い駐車場のみが子供の遊び場という所もあった。また抽選であちこちに住民が散在してしまったので、元のコミュニティとの断絶、高齢者の集積などがあり、孤立した住居者の孤独死が多く現れた。今後はできるだけコミュニティ入居の実現、仮設店舗などの生活支援施設の併設が要望として揚げられている。



個人が自力でつくる仮設住宅の場合、法的担保はない。市町村が民間賃貸住宅を借り上げて提供する「みなし仮設住宅」もある。家賃は一戸当たり月額6万円とした前例を参考にすることになっている。ただし、この場合、被災者が入居していることがわかりにくく、ボランティアが物資を運んで来ないという問題があった。

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おすすめ本
「地震イツモノート キモチの防災マニュアル」 ポプラ社


阪神淡路大震災の被災者の生の声が散りばめられ、実際的。ポケット版で、図も多くさっと読めます。幾つかの名言引用

「ライフラインが止まる。それは原始生活以下になるということです。」

「地震の瞬間は何もできないと考える」

「揺れた瞬間何もしない。地震に強いとはそういうことかもしれません。」

「隣の人とあいさつしている、それが大きな防災でした。」

「非日常が日常に変わっていく、避難所の共同生活。」

「防災といわない防災。モシモをイツモに」

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災害支援団体クラッシュジャパン次期東京災害対策担当
日本防災士機構認定 防災士
栗原 一芳
crashkazu@gmail.com


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