2015年3月10日火曜日

自治会の取り組み


あれから、4年。2011年3月11日の東日本大震災から、4年が経ちました。昨日(3月9日)のニュースによると、福島の災害公営住宅の入居者305人のうち、半分以上(58%)は65歳以上の高齢者。そのうち3人に1人は一人暮らしという実体が明らかになりました。ご近所つきあいもなく、部屋に籠っているというお年寄が多いのです。孤独死につながるこの状況はシリアスで、心のケアやコミュニティつくりが益々大切になってきています。また、東北3県で、仮設住宅の撤去は4年経っても1割程度という報告もあります。

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 自治会の取り組み(1) N自治体のケース

東京都東久留米市では年に2度ほど「防災情報交換サロン」が開催されています。そこで自治会の防災に関しての取り組みなどが紹介されます。住民の状況や災害時のニーズを知るために、世帯調査を行っている自治体もあります。もちろん、家族情報などを提供するのはプライバシーの問題もあり、なかなか進まない面もあります。しかし、回を重ねるごとに賛同者が増えているようです。

N自治体の場合、95%という高回答率で、それを基に、「防災助け合いマップ」を作製しました。自治体の個々の家の名前の入ったマップに、防災委員の所在、AED, 火災報知器の所在の他、避難経路が記されています。このマップの特徴は、「助け合いグループ」のグループ区分けが記されていることです。近隣の3−5世帯で「助け合いグループ」を作り、災害時に声をかけあい、安否確認をするためです。調査によると、高齢者(80歳以上)が多い、単身世帯が増えている、単身者の高齢者が増えているという実体が明らかになりました。それで、緊急医療情報キット(写真右は同種ですが、西東京市のものです。実費420円)を全世帯に配布しました。この情報キットには緊急連絡先、かかりつけ医者、血液型や薬情報なども記され、冷蔵庫に保管されます。救助隊が入って来た時、迅速に対応できるためです。さらに、防災委員だけが所有する、詳細情報マップもあります。そこには、どの家庭に高齢者(特に単身)がいるか、どこに要援護者(難聴、乳幼児、車いす等)がいるかが色分けされ、記されています。防災委員会は年6回、各区交流会は年1回。助け合いグループと防災委員のつながり、地域の絆つくりのため、年1回の防災訓練や水の配布なども行っています。


 




















自治会の取り組み(2)  M自治会のケース

社会福祉協議会(社協)と自治体の共同調査という形で、「減災・防災対策に関するアンケート」を実施しました。実際は社協がアンケートの作製、印刷、集計、報告書作成を担当。自治会はアンケートの配布、回収、報告書の配布、結果報告会の実施を担当。自治会のある町の人口は1741人、771世帯。高齢化率は19.4%。自治会加入は257世帯(戸建 235、マンション 22世帯)自治会加入率:33.5%。

このように自治会加入率が少ないのは最近の傾向で、あっても機能していないことが多いのです。意識の高い人が数名いると動きが出てきます。この最初のスタートが大きなチャレンジですね。


アンケートからわかること (幾つか抜粋してみます)

<回答者>

   回答者の41%は30年以上の居住者。年齢の高い人が多い。

   一方、5年未満の人が19.4%。他の自治会と較べて新しい人も多い。

   耐震基準前(1981年以前)の家が34%。建て替えた家も多いが、耐震基準前が3割はある。


<家族>

   夫婦のみが25%、うち60歳以上が87%。日中、70歳以上で一人だけになる家庭が  21.8%ある。


<近所つきあい>

   生活面でも協力し合えるという人が14%。心配事など言える人を持っているが42%と高い。回答者には中高年の女性が多いことも考慮。


<防災意識>

   防災訓練、参加した経験は60歳以上の人は多く、年齢差がはっきり。仕事や育児で参加できない人が多い。

   備蓄に関しては、飲料水(68.5%)、懐中電灯、ろうそく(82.9%)ただし、簡易 トイレ(24%)。

   家具の固定は半数近くの家で実施(46.8%)。新耐震基準以前の家76軒で、耐震補強をしているのは12軒(16%)

   災害時、避難所生活が長期化したと想定した場合の不安は「トイレ」問題がトップ
(87%)、ついで「水、食料」(70%)、プライバシー(55%)

   災害時の避難で近所に気になる人(要援護者)を把握している人が多い(76%)。ほとんどの人が(87%)自分や家族の安全を確認した上で「要援護者」への支援をしたいとしているのは心強い。



こうして見てみると、耐震化はお金もかかるので、あまり進んでいないように思われます。東京23区でも耐震検査をした8割は耐震化が必要と認められましたが、実際に耐震工事を行ったのは1割という報告もあります。それから、水、食料の備蓄はある程度しているようですが、緊急トイレ用意が思ったより行われていないですね。長期の断水、停電が予測されるので、緊急トイレは是非、備えたいものです。また、阪神淡路大震災では、家具の転倒などによる圧迫死が8割でした。半数近い家では家具の固定を行っていますが、それでも半数はしていないということです。家の耐震化は難しいにしても、家具の固定だけは、基本中の基本ですので、是非お願いしたいところです。また、避難所でのプライバシー問題は女性にとっては大きいでしょう。授乳や、着替えなどに使えるテントを用意しておきたいものです。防災や避難所生活に関して、意外と忘れられがちなのが、女性の声です。洗濯ができないし、下着が不足するという中で、女性による「下着洗濯ボランティア」などが大変役に立つのではないでしょうか。



また、この調査では、この自治体に福祉医療の資格を持つ人が21%もいることがわかりました。大変、心強いのではないでしょうか。地元コミュニティのリソースを知る事、普段から信頼関係を築くことが大事ですね。

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西東京市の例


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一般社団法人 災害支援団体 クラッシュジャパン
次期東京災害対策担当
日本防災士機構公認 防災士

栗原一芳 (くりはら かずよし)
contact@crashjapan.com



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